こちらに来てから毎日がとても目まぐるしい。
まだ私がここに慣れていないからかもしれない。
この世界で必要以上に物語に関わらないでいようと誓った筈なのにカミューラの一件で私は大きく動いてしまった。
なぜあのような事をしたのか自分でもわからない。
動くにしてももっと良い方法があったかもしれないのに何故私は。
彼女が私をあっさり受け入れた理由もわからぬままだ。
主人公である十代君が私に感情をぶつけてきた。
彼はあんな少年だっただろうか。
物語のキャラクターであった彼らの初めて見る姿に正直戸惑っている。
その姿は見ることになった理由が私であることにも。
「名字さん」
私の名前を呼んだのは三沢君だった。
彼に声をかけられたのは初めての事だった。
「先日は色々と大変でしたが身体に何か異変はありませんでしたか?」
若いのに出来た子だと思った。
こんな状況で私の方に気付いが出来るだなんて。
私なんかよりずっと大人びた子だと思う。
「心配事してくれてありがとう。
私は見ての通り全然平気。
三沢君は、その、大丈夫?」
我ながら失礼な質問だと思いつつもそれ以外言葉が浮かばずそう聞いてしまった。
アニメでは描かれていなかったが彼にだって鍵を守る人間としての責任が重圧になっているかもしれないのに。
「俺は平気です。
まだ闘ってすらいませんから。
そういえば翔達は気分転換を兼ねて十代を連れて温泉に行ったみたいです。」
ということはカイバーマンとのデュエルを行う日なのだろう。
十代君はここでまた強くなるのだ。
それが眩しくて少し寂しく思う。
どんどん自分の手の届かない所へ行く彼らに。
おこがましいと笑われるかもしれないけれど。
「十代は貴方をとても気にかけているようですね」
三沢君の言った言葉に動揺した。
それは私自身が自覚していることだったからだ。
「正直意外でした。
あいつが人に、しかも異性に対してあんな風に感情を露にするなんて。
でも少し安心しました」
アニメで見ていた三沢君と同じだ。
本当に十代にとって色んな意味で良い友人なのだと思う。
ただ三沢君の言った言葉に対しては何と返していいか分からず言葉に詰まってしまった。
「名字さんの気持ちを強請するつもりはありません。
でも端から拒絶はしないでやってほしいです、立場上難しいかもしれませんが」
三沢君のそれはまるで十代君が私を異性として意識していると言っているように聞こえる。
それを頭の中で否定するも本当は私自身うっすらとその気配は感じてしまっていた。
しかし理由も分からない、十代の本心も分からぬままそれを考えても答えは出ないのだ。
「三沢君はきっと素敵な男性になるんだろうね」
三沢君の言葉に答えられない私は矛先を三沢君自身に変えた。
とは言ってもこれは私の本心だが。
三沢君は私の言葉に顔を赤くして否定した。
「勤勉で思いやりがあって勇敢でもある、三沢君みたいな人なかなかいないと思うよ」
そう続ければ更に恥ずかしそうに否定したあとしどろもどろになりながらもきっちりと挨拶をして私の前から走り去ってしまった。
どこまでも優等生な子だと微笑ましく思った。
三沢君や私の感じたそれは勘違いなのかもしれない。
それでももしそれが事実だった時私はしっかりと自分の心と向き合わなければならない。
彼のおかげでそう決意できた。
真っ直ぐな貴方に感謝します