あれから少ししてまた一つ事件が起こった。
授業をサボる生徒が増えたということだ。
タイミング的にその理由はタニアの件だろうから心配する必要はないのだろうけどこれだけ生徒が減っていては授業のしがいもないのではないかと思う。
というかクロノス先生がいなくなっていることに気が付かないあたりまだ平和ボケしているように感じる。
(でもそれはきっと良いことなんだろうけど)
森で行方不明になっている生徒の鞄が見つかった為私達は探索に向かった。
森を進むとそこにはあきらかについ最近までは見かけなかった建造物があった。
(こんなものが完成するまでみつからなかったなんて奇跡だなぁ)
実際に見る闘技場に思わず感心してしまった。
中では授業に出ていなかった生徒達とクロノス先生がいた。
(お賃金は一体どこから出たのだろうか?)
なんてどうでもいいことを考えてしまった。
タニアと人となりを知っているのもあって今回は気持ちに余裕があるのだろう。
「我こそは男という者出ろ!」
その言葉に三沢君、万丈目君、十代君が名乗りでた。
タニアが対戦相手に指定したのは原作通り三沢君だった。
万丈目君と十代君が不満げな表情でこちらに帰ってきた。
明日香ちゃんは二人のその姿に呆れ顔だ。
「なぁなぁ!名前はこの中で誰が一番男らしいと思う?」
「え」
十代君のその質問に明日香ちゃんと万丈目君はこちらに注目した。
十代君の目が訴えている。
自分であると主張している。
「·····み、三沢君は確かにキリッとしているし意思の強い男の子だと思うし、万丈目君は逞しくて根性もあって素敵だと思うし遊城君はその、真っ直ぐであの、とても素敵だから皆男の中の男、ってやつじゃないのかな?」
私の酷く曖昧な答えに万丈目君は当たり前だという表情をして明日香ちゃんはため息をついて十代君は少し不満げだ。
皆魅力的な男の子だと思うのは事実だし一応教員側の人間であるが一人の生徒を贔屓する発言をするのもよくないだろうと思ってのことなのでこの対応で正解だとは思うのだがなんだか罪悪感を感じてしまった。
「俺は名前の事すげぇ女だって思うぜ」
すげぇ女とはどういう意味なのだろうか。
深く突っ込んではいけない気がする。
十代君が私に笑いかけた。
その笑顔が先程の言葉とは対称的に妙に大人っぽく見えてなんだか見てはいけないものを見てしまったような気持ちにさせられた。
「あ、ありがとう?」
この天然っぷりが明日香ちゃんやレイちゃんを魅了したのだろう。
ここ最近の十代君とのやりとりを思い出してしまいそれを忘れようと頭を振った。
(私はあくまでもいない人間なのだ。
そんな期待をしてはいけない。)
そんな事をしている間に三沢君はタニアに敗北してしまった。
同時に三沢君がタニアの婿になることが確定した。
結末はわかっているけれどこの世界は本当に複雑で感情の操作がとても難しい。
(三沢君のこの後を知っているからこそ心配だなぁ)
つい最近お世話になったのに近々放心状態になる三沢君になにもしてあげられそうにないのがなんだか申し訳なくて心の中で三沢君に謝った。
そこで違和感に気がついた。
ねぇ、期待って私は何を期待しているの?