30:許してはいけないと分かっている

(私はどうしてここに来たのだろう)

明日香ちゃんとタイタンのデュエルは無事明日香ちゃんが勝利を納めた。
この閉鎖寮で。
デュエルが終わった後私は一人で再びそこを訪れた。
使われなくなったそこは薄暗くなんだか妙に肌寒い不気味な雰囲気だ。

この島自体が特別な場所でもあるけれどやはりここは何か違う雰囲気があるように思える。

私は誰かの手によって送られたのだろうか?
分からない、分からないのだ。

「にゃーお」

その時猫の鳴き声が一つ、後ろを振り向けばそこにはファラオがいた。

ファラオはそのまま遼の奥へと駆けていく。

(そこに大徳寺先生がいるのだろうか?)

心は複雑だった。
彼には彼の信念がありそれに忠実に生きているだけだ。
沢山の子供達を巻き込んだ、それは褒められたことではないだろう。
だけれど彼は十代君達に慕われている。
十代君と過ごした彼は偽りだったのだろうか?
それは違う気がする。
全てが偽りだったとしたら彼らがあんなに慕う筈がない。

(もっと大徳寺先生と話をしておけば良かった)

いつか来る別れが不安でこの世界の人と距離を置いていた自分を今になって後悔した。

仮にこの世界に来ていなかったとしても望まぬ別れを今まで経験してきた筈だ。

それを私は忘れていた。

今目の前にいる彼らを見ないようにして弱い私を見ないようにして全てから逃げていた。

(きっといつか今この瞬間を後悔する日が来る気がする)

ここに来てもうすぐ一年が経とうとしている。

覚悟を決める頃合いなのかもしれない、私はそう思った。

「·······また、近い内に貴方に会いに来ます」

そこにいるかは分からない、だけどもそう伝えたくて先の見えない深淵に向かって独り言のように呟いた。

私はいつまでも弱い自分でいるわけにはいかない

変わらなければ