あたらしいいのち
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ふわふわ、
あたたかい温もりに、頬を弛めて擦り寄れば、その温もりがびくりと震えた
「……?」
なんだろうと眠気まなこをこすりながら、ぼーっと目の前にある傷のある少年の顔を見るが、中々頭がはっきりしない
まぁ、いいか
そのまま、また瞼を閉じて彼に身を寄せれば、そぉっと、優しく背中を撫でられた
その優しい手に、再び意識が遠のいていく
(あぁ、ここちのいいてだなぁ……)
「なまえ……なまえ!」
「むむぅ、もうちょっとぉ……」
「もう!ほんとにねおきがわるいな!なまえ!おにいさんがいないぞ!というかなんでここでねてるんだ!」
カリカリとしながらわたしの布団を剥ぐ炭治郎くんに、うぅ、と唸りながらもぞもぞと起き上がる
ここで寝てるんだ?って……なにが?
首を傾けて布団を見ると、昨日傷の少年が寝ていた布団にいたようだ
順を追って昨日の夜のことを思い出していく
(んっと、確か初めて大怪我の人治したから怪我のことが心配で近くにいたんだけど……)
きっと途中で寝落ちて寒くなってしまって布団に入り込んだんだなぁ……なんて結論に至る
あれ、それよりも…
「あのひとは……?」
「おれがおきたときにはもういなかった。でも、なにかかきおきはのこしているみたいだ」
なんて読むんだろう?なんて首を傾げる炭治郎くんが可愛くて、にやけながら紙を受け取り中を開けば小さな花がいくつか出てきて、そこに書かれた一言に更に頬が緩んでくる
「せわになった、か……」
元気になってよかった
膝に落ちてきた花を大事に手のひらで包んで、祈るように胸元に寄せた
(どうか、おげんきで)
それからいつも通りに、家の家事を手伝いながらせかせかと歩き回っていれば、お腹に手を当てる葵枝さんに気づいて慌てて駆け寄る
「きえさん、どうしたの?おなかいたい?」
「……大丈夫よ…どうやら、陣痛がきたみたい」
「……!!!!たんじゅーろーさあああああん!!!!」
慌てて葵枝さんを家の中に入れて炭十郎さんへと知らせに行けば、彼も慌てて町へと降りていった
ここから町は結構遠くにあるみたいだけれど、近くに産婆さんがいないから町まで呼びにいかなければならないのだ
切迫でなければ陣痛きてすぐに産まれることはないだろうから、時間との勝負である
家の中へと入れば、禰豆子ちゃんをあやしながら時々家事をしようとする葵枝さんを布団へと誘導して、今のうちにいつでもお湯が出せるように湯を沸かす準備をしておく
騒ぎを聞きつけた炭治郎くんは、葵枝さんの周りをそわそわとうろちょろしていたので、今のうちに一緒に家事を進めようと声をかけて分担してテキパキと家事を行う
そしてある程度家事を終え、陣痛の間隔が段々と短くなってきた頃
漸く炭十郎さんが産婆さんを抱えて連れてきて、ほっと息を吐く
さて、ここからが正念場だろうなぁ
額の汗を拭い、いつでもお手伝いできるように待ち構えていれば、葵枝さんの息が荒くなってきて、痛みで声が上がるのを炭十郎さんと炭治郎くんが涙目で大丈夫か!と声をかけている
産婆さんが葵枝さんに声をかけながら、息を整えるように伝える
「ううぅ〜〜!!!!」
「かあさん!」
「葵枝……!」
出産は、赤ちゃんもだけど、お母さんも命懸けだ
じんわりと手に汗が滲むが、1番痛いのは葵枝さんだ
痛みで悲鳴をあげる母に驚いたのか、禰豆子ちゃんがぽろぽろと涙を零して嗚咽をあげる
ここで禰豆子ちゃんが泣いちゃえば、葵枝さんが出産に集中できないかもしれない…!
これはやばいと思ったわたしは、すぐさま禰豆子ちゃんを抱っこすると、ぽんぽんと小さな背中を撫でた
「だいじょうぶだよ、ねずこちゃん、おかあさんはあかちゃんをうむのにがんばってるんだよ」
「あかちゃん…」
「そう、ねずこちゃんのいもうとかおとうとがげんきにうまれるようにがんばってるんだ。だから、いっしょにおかあさんをおうえんしよう?」
がんばれー!って葵枝さんへ声をかけると、わたしに続いて禰豆子ちゃんも「がんばれー!」と声を出した
よかった、ひとまずは泣き止んでくれた
ほっとしながら禰豆子ちゃんを抱っこして応援していれば、産婆さんがもう少しですよ!と声をかける
あわあわする男組と、応援する女組
そして必死にいきむ葵枝さんが、一際大きな叫び声をあげると、そのすぐ後にふぇっ、という声が聞こえ、小さな生命はすぐに大きな泣き声をあげた
「っ……!!うまれた……!」
初めて、出産に立ちあわせてもらって、生命が誕生する瞬間を目の当たりにして、もう、感動に言葉が出ない
(すごい…、生命って、尊いな……)
きゃー!と喜ぶ禰豆子ちゃんをぎゅ、と抱きしめて生命の温かさを実感する
自然と流れる涙を拭うこともせず、産まれたばかりの子をだっこする葵枝さんの近くへ座る
「きえさん、がんばりましたね」
「はぁ……ありがとう名前ちゃん」
ふふ、といつもより疲れたように笑う葵枝さんは、本当に幸せそうで、炭十郎さんがよく頑張ってくれた!と彼女と赤ちゃんを抱きしめ、炭治郎くんと禰豆子ちゃんは興味津々といった様子で赤ちゃんを覗き込む様子を、少し離れた位置で見ながら涙を拭う
(帰るその時が来るまでは、何があってもこの人たちを守ろう)
とっても優しい、この人たちを
「……なまえ」
ぼーっとその様子を見ていれば、炭治郎くんがいつの間にか近くにいてわたしの手を握っていた
「いっしょに、だ」
その言葉に、とくりと小さく鼓動が跳ねる
…ほんとうに、炭治郎くんにはかなわないなぁ
苦笑いをこぼして、その手を握り返す
「うん、いっしょに…まもっていこうね」
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