おともだち







「おーるまいとはすげーんだぜ!!」


じゃーん!とオールマイトの人形を持って突然現れた勝己くんに、おやつを口に含んだ状態で固まるとお母さんが「いらっしゃい勝己くん」と笑って彼の前にもおやつのおはぎを置いた

返事をするにも口におはぎが入っているためできず、手を挙げてちょっと待ってねと目で伝えながらもぐもぐと一生懸命噛み砕きごっくんと飲み込むと、お茶で更に流し込んでから勝己くんへと向き直った


「おーるまいとのおにんぎょう、かってもらったの?」


確か勝己くんが大好きなヒーローだったはず
あまりテレビを見ないのでヒーローのことはそこまでよく知らないのである
でもオールマイトに関しては、勝己くんがいっぱい教えてくれたから知っている


「そーだ!かっこいいだろー!」

「すごいね!ほんものそっくり!」

「なまえにもかしてやらねーことはねーぜ!なんたっておまえはおれのよめだからな!」


オールマイトの人形を褒めれば、ふふん、と鼻を鳴らしてそう言う勝己くんにへらりと笑い返す

あれから会う度に勝己くんはわたしのことを俺の嫁、と何度も強調して言ってくるようになった
あの時わたし、いいよなんて言ってないんだけどな…なんて思いながらも、ニコニコ笑ってる勝己くんの顔を曇らせたくなくてこうしていつも押し黙る


「じゃあおやつたべたらいっしょにおーるまいとのおにんぎょうであそぼう」

「おー!おばさん、せんめんじょかります!」

「はーい」


勝己くんはオールマイトの人形をテーブルの上に立たせるとバタバタと洗面所へ向かった
手を洗っているのかバシャバシャと聞こえる水の音を聞きながら最後のおはぎを口に放り込んだ






おやつを食べ終わり、勝己くんと部屋でオールマイトの人形で遊んでいると、ベランダの外から視線を感じてそちらに目を向ければ、くしゃくしゃの髪をしたそばかすのある男の子と目が合った
彼はハッとしたように目を丸くすると、わたわたと慌て始める
それに首を傾げていれば、わたしの様子に気づいた勝己くんがベランダの外を見て眉を寄せた


「んだよ、デクか」

「おともだち?」

「こぶんだ」


どうやら勝己くんの知り合いのようだ
彼の隣には、母親だろうか…優しそうな女の人がわたしたちのことを微笑ましく眺めていた

カラカラとベランダを開けて彼に手招きすれば、遠慮がちにこちらに近づいてくる


「はじめまして、みょうじなまえっていいます」

「あっ、は、はじめまして!みどりやいずくです!」


あれ、デクじゃないんだ?
あだ名つけるくらいには、仲良しさんなんだなぁ、なんて思いながら彼の手を引いて家の中に招く

後ろでわたしのお母さんが彼のお母さんへ声をかけて玄関へ誘導しているのを聞きながら、彼に声をかける


「いずくくんも、いっしょにあそぼう」

「あ!おい!」

「い、いいの?」


ちらりと勝己くんの方を見てから頬を染めて俯く彼にへらりと笑う


「おーるまいと、すきなんでしょう?」


さっきからチラチラとオールマイトの人形を見ていることや、オールマイトの笑ってる顔がばん!とついているTシャツを着ているからきっと彼もオールマイトが好きなんだろう


「かつきくん、みんなでいっしょにおーるまいとのおはなししよう」

「…しょーがねーな、デク!このにんぎょうとこいつはおれんのだからな!」


勝己くんに手を引かれてよたよたと彼の横へ座り込めば、いずくくんが顔を真っ赤にして何度も頷いた
それに気を良くしたのか機嫌をなおした勝己くんがオールマイトの話を始める
必殺技のことやこの前どこでどんなことをしたとか、勝己くんのお母さんが迎えに来るまで3人で夕方になるまで話したのである

こうしてお友だちがまた1人増え、オールマイトの知識量ばかりが日々増えていったのである





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