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「〜〜っ‼︎あっ、あっ、あぁ゛〜っっ、ご、ごめなさっ…っ」
「浮気はダメ、ね?」
「んっ、もうしなっ〜っ、あっ、やっ〜っ!」
こんなの俺じゃない。俺じゃない。
自分に言い聞かせるが、そんな俺を無視して下半身からは強烈な快感が押し寄せてくる。
打ち震える俺を無視して、小白は更に腰を打ち付けてくる。
向かい合って、手だけはほんとうの恋人のように絡ませて。
「嘘っぽいなぁ〜?」
「ふっ、ーっ、ま、まって…っも〜〜っ‼︎」
「あ、やっぱり。やめて欲しくて嘘ついてるでしょ?」
「〜〜っ!」
小白は自分のものを最奥に捩じ込んできた。
俺がのけぞりびくりびくりと震えると、開いた首筋にキスをする。
「それに、中はもっとって言ってるみたい。卑猥で可愛いなぁ〜、俺のみけちゃん♡」
泡を吹きそうな俺に対して、奴はうっとりと満足げな吐息を吐いた。
あーやめろ…
そう思った時にはもう遅い。
それとなく顔を背けて逃げたのに、ガッチリ頬を掴まれキスをされる。
…っ、舌が、下が…
触れる箇所全てがじんじんと響き、気持ちいい。
こんなに気持ちいいのなんて嫌だ。
軽く自己嫌悪からぎゅっと目を瞑ると、ふふっと小白のご機嫌な笑い声がした。
「はぁっ♡可愛い♡俺のっ、みけちゃんっ!俺だけのっ、みけちゃんっっ‼︎好きっ♡好きっ好きっ好きっ好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き♡」
「〜〜〜っ!」
小白は狂気を囁き、俺の弱いところを重点的に突いてきた。
ぐりぐりと前立腺が押しつぶされ、声も出せない。
小白は飛び跳ねる俺の身体を、抱きしめベットに押し付ける。
そしてちゅっとちゅっと体中にキスを落とした。
「っ゛!」
「もーっ、最高過ぎる♡」
「あ゛ぅっ〜っ」
最低すぎるだろ。
どうして…遊び放題で人生謳歌していた俺がどうしてこんな事に…
あの人生最悪の日を俺は思い出した。
———-
普通、Ωに産まれた奴はコソコソとその性を隠して生きる。
Ωと言えば、周囲にフェロモンをばら撒く厄介者。
理性ある人間を誘惑して、ただの獣に変えてしまう。そう思われている。
しかしそんな中、Ωである俺の考え方はこうだった。
なんで?
性欲真っしぐらでエッチじゃ駄目なの?
ほら、皆気持ち良いのは好きでしょ?
Ωのフェロモン、最高でしょ?
Ωの俺、最高でしょ!
そんな感じ。
開き直って、男女構わず遊び回った。
だって、相手に困らなかった。
Ωは希少種みたいなもんで、Ωとやりたい奴なんて腐るほどいたからだ。
バンドもして、ファンから何から食いたい放題。
全てが順調だった。
あの日までは。
「ちょっ、これ!なんだよ‼︎ふざけんなよ!」
ある日突然、俺はバンドメンバーのいつき(ベース)とさつき(ギター)によって、ぐるぐる巻に拘束された。
漫画みたいにぐるぐる巻きだ。
「騒ぐなってー。お前にとっても良い話だから…」
「そうそう。身を任せるんだ!」
「これで俺らのバンドもメジャーデビューだぞ〜!」
「勿論、いつきの言う通り、お前個人にもいい話だ!……た、多分!」
「はぁ⁈」
ぐるぐる巻きで芋虫みたいに跳ねる俺に、2人は半笑いで落ち着けと言う。
意味がわからん‼︎
「ちょっとちょっと〜!これ、どう言う事⁈」
「小白‼︎」
そうやってもめていると、部屋に小白が入ってきた。
良かった。
小白はまともな反応だ。
因みに、小白は抜けたメンバーの代わりに最近ヘルプできている。ボーカルだ。
今まで対して仲良くとなかったのに、ドラムが抜けた途端申し出てきた。
ついでに言うと、俺は小白が嫌いだ。
小白が来てから、俺はボーカルからドラムに変わることを強いられたからだ。
小白はドラムが出来ないが、歌が上手くて華がある。
対する俺は、ドラムも出来た。大した花もない。
結果、俺はドラムにさせられた。
気に入らない!
ちょっと顔が良いからって、チヤホヤされやがって…。
「小白!こいつら変なんだ‼︎助けてくれ!」
「ふふ♡」
あん?
何笑ってんだ?
俺は一瞬、自分の窮地も忘れて首を傾ける。
小白はぐるぐる巻きの俺が助けを求めると、至極嬉しそうに笑った。
いや、基本的に小白は馬鹿みたいに常にニコニコしているが…。
今の笑みは、すこし含みがあった。
いつも冷たくしている俺の醜態が愉快ってか?
「2人とも、何してるんだよ〜。」
よし、いけ!小白!
「これじゃ、すぐ出来ないでしょ。みけちゃん、縄解いてズボン脱がそうとした瞬間に逃げそうでしょー。」
「「!」」
「⁈」
小白はいつもの眩しい笑顔のまま、謎発言をはいた。
いつきとさつきがその言葉をきき、納得した顔をしているのは更に謎だ。
「あー、ごめんごめんー、小白」
「でも、見てみろよ!」
ピッ
「ひっ、っ゛っっ!〜〜っ!」
何で⁈
さつきがそのリモコンを⁈
さつが俺に向けて押したリモコンは、俺の中に入っているバイブのリモコンだ。
今日の練習後会う約束をしているちょっとSっけの強いりこちゃんに、入れててって言われたやつだ。
俺は混乱したまま悶える。
「んんっ?ぁ、ぅ〜っ!っ?、⁇」
いや、これ!
入れたまま練習頑張ったらりこちゃんにご褒美もらえる約束のやつ!
りこちゃんに手渡しでもらったやつ!
何で⁈
ただでさえΩの体は快感に弱い。
おまけに自慢じゃないが、俺は男も女も前も後ろも節操なく開発済み。
「即挿入出来るぞ!」
震える俺を他所に、さつきが自慢げに宣う。
「へ〜」
小白が目をキラキラとさせて俺に手を伸ばしてきた。
触るなっ!
「あは♡」
「っ、」
俺は言い知れぬ恐怖を振り払うかのように、小白の手を頭を振って拒んだ。
そんな俺を見て、小白はニンマリと笑う。
「さつき!いつき!てめーら何考えてんだ!」
「…っ、仕方ないだろ!これが小白加入の条件なんだ!」
「あぁ⁈〜っ、ていうか、これ、止めろっ!」
「ぁ」と言う顔をして、さつきが俺の中のものを止めた。
「加入条件ってなんだよ⁈」
「三池が小白の彼女になったら、小白は俺らのバンドに正式加入してくれるんだ〜。」
「はぁ⁈そんなの、断れよ!」
「「断れるかよ!」」
「っ、な、なんだよ…」
とんでもない条件だ!
そもそも、俺個人としては小白なんか早く抜けて欲しい。
しかしさつきといつきは違うようで、声を合わせて反論された。
「小白の知名度と人気があればメジャーデビュー出来る!」
「正直、歌もみけより…いや、他のどのボーカルよりも上手い!」
「その上、結婚したいモデルランキング一位!」
「更に更に、好感度ランキング一位!」
いつきとさつきが矢継ぎ早に捲し立てる。
ていうか、小白ってそんななんだ…。
……ますます嫌いになった。
「小白が入らなくたって「「もう無理だ‼︎」」
「っな…っ⁈」
とにかく小白の加入を阻止したい。
しかし取り付く島もない。
「みけが対バン相手の彼女と寝て頓挫になったライブ」
「みけがスタッフと寝て出禁になったハコ」
「みけが病みファンに監禁されてすっぽかしたライブ」
「みけがやり捨てしたファンによって炎上したSNS」
「な、なんだよ、いつきもさつきも…」
いつきとさつきは2人揃って「はぁーっ」とため息を吐く。
「思えば、お前の下半身には随分苦労させられたなぁー。」
「と、言うことで、今度はその下半身で恩を返せよ。」
何だそれ⁈
「断るなら、みけがバンドを抜けろよなー。」
「俺たちの覚悟は固いぞ。」
2人の中では小白との取引、もとい人身売買が成立しているらしい。
しかし俺がいくら節操なしといえど、小白は嫌だ。
俺は、男なら俺に従順な奴としかやらない。
そもそも小白は嫌いだ。何度でも言うぞ。あいつは嫌いなんだ。鼻につく。
しかしいつきたちが言った話はどれも本当だ。
確かに、俺の評判は悪い。このバンドを首になったとして、行く当てはない。
頭を抱えていると、視線を感じた。
小白だ。
小白は俺と目が合うと、白い歯を見せてニッコリと笑う。
仕方ない。小白に直談判して…
「こは…ぅっ⁈」
その瞬間、再び俺の中のものが震え出す。
よくよく見ると、あのリモコンは今は小白の手の中だった。
「〜〜っ!こっ、…ってめ!」
「みけちゃん、まずは俺以外の連絡先は全部消そっか?俺がずっと側にいて、俺が取次いであげるしさ、さっきみたいな話聞いたら、俺も嫉妬するでしょ。」
小白は含み笑いだが、何処となく不満気だった。
しかしそんな、過去の話で嫉妬されても困る。
「うっ〜っやめっ、とめろって〜〜っ!」
気持ちいいっ。こんなっ、ところで気持ちよくなりたくないのに…。
いつきとさつきは無駄に気をきかせ、そそくさと部屋を出た。
この醜態を友達に見られない事だけが救いだ。
「あと、一緒に住もうね。3日内に俺の家に引っ越してきてね。それにやっぱりみけちゃんが心配だから、俺と一緒にいない日は、一定時間毎に俺に誰と何処にいるかを連絡してね。それが嫌ならGPSつけるね。」
「〜〜〜っ‼︎あっ、つっ、とめ゛っっ‼︎」
小白が丸まって喚く俺を仰向けにひっくり返し、どかりと上にのってきた。
「聞いてる?」
「ぁ゛っ⁈」
そして服の裾から手を差し込み、ぐにっと乳首を掴まれた。
じぃんと快感がのぼってくる。
「これからは俺だけ見て。俺の話だけ聞くんだよ?よそ見したら、お仕置きだから。ね?」
「っ゛、〜〜〜っ‼︎ぅ゛んっ!うん‼︎わかっ、…っ〜っ‼︎っぃう通りっ、するっっ‼︎」
くにっとつままれ、カリカリと乳頭を攻められる。性感帯への刺激オンパレードだ。
結果、俺はガクガクとクビを縦に振るしかなかった。
小白はそんな俺の醜態に満足気に頷き、やっと振動を止めてくれた。
「…っ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」
俺は小白から顔を背け、乱れた息を必死に落ち着ける。
何が好感度一位だ…
こんな…顔だけの奴じゃないか!
「だから、俺の事見ていてよ。」
「っ」
見ろと、小白は俺の顔を自分の方へ引き戻す。
小白の目は、その名前みたいに綺麗な琥珀色だった。
その瞳にいっぱいに俺が映る。
…。
小白の目の中を占める俺。
全身全霊で俺を見る小白。
妙な気分になる。
俺は…あの人とは違う。
Ωでも、コソコソ生きない。
目立ってキラキラしていたい。
秘めていた心の声が思わずついて出る。
小白の目に映る俺はキラキラ光り、俺だけを写していた。
ホワホワとした…この気持ちは…
「はぁ♡好きな子がこんな状況で、これ以上は我慢できない。」
「うっ…っ」
いや違うだろ。
やっぱりこいつはただの顔だけな最低ヤローだ!
その後はお察しの通り。
俺は小白に美味しく頂かれ、小白の彼女?彼氏?になった。
あれは本当に最悪な日だった。