淡色心

お前のことが好きになっちまったと言われて、不遜な笑顔とは裏腹に緊張で震える指を隠すように腕を組んだ三木さんを、俺の方も好きになってしまったのが七日前の話だ。
だから俺と付き合えよと言われた時には、はいと答えていた。

それから今日まで、三木さんは俺に一切触れて来ていない。
そのくせ他の隊士とは肩を組んだり、鍛えたと言う人の筋肉に触ったりしている。

俺は、徐々に不安に駆られていく。
三木さんが他の人に見せる笑顔は格好良くて、もしかしたら俺以外とも同時に付き合ってるのかもしれないと、そんな悪い考えばかりが浮かんで消えてくれなくなっていた。
このまま別れたくはない、けれど大勢の中の一人で居るのはもっと嫌だった。

「三木さんて、本当は誰が好きなんですか?」

勇気を出して問い掛けた。
対する三木さんは、本気で意味が分からないと言った顔で、怒ったように返事をする。

「はぁ? お前に決まってんだろ?」
「なら、何で……」

何で、他の人にしか触れないんですか。
そう続けた声は、自分でも驚く程掠れていた。緊張し過ぎてる自分が恥ずかしくなって俯くと、三木さんの笑い声が聞こえてくる。

「何だよ、寂しかったのか?」

けらけらと楽しそうに笑われて、一緒に笑おうとしてみたけれど全然上手くいかなかった。
駄目だ、泣いてしまいそうだ。
そんな俺の様子に気付いているのかいないのか、三木さんは笑ったまま話し続ける。

「自分でも吃驚したんだけどよ、俺お前と付き合えるのが凄ぇ嬉しいみたいなんだよな。だから今お前に触ったりしら、相馬のこと滅茶苦茶にしちまいそうだったからよ、取り合えず他の奴等で発散してた」

俺って案外優しいよなぁと笑う三木さんは、俺の気持ちを全然分かっていない。

「い……です」
「あ?」
「め、めちゃくちゃに、しても……いい、ですから……」

だから、他の人になんて触らないで下さいと続けた。
思わず出てしまった大胆な発言は、三木さんにきっと揶揄われて笑われるだろうと思っていたのに、予想に反して彼は真剣な表情で俺を見詰めてきた。

「それ、本気で言ってんのか?」
「……はい」

へぇ、と呟いた三木さんは、いきなり凄い勢いで俺を壁に押し付けた。
その衝撃で、けほっと一つ咳が出る。俺の腕を掴む三木さんの手が痛い。

「なら、させてもらうわ」

そう言って、元々痛い程の力で掴んでいた俺の腕を引き千切りそうな強さで握り込んで、唐突に俺に噛み付いた――いや、噛み付かれたと思ってしまう程の勢いで、口付けをしてきた。
容赦無く入り込んできた舌が俺の呼吸を奪い、苦しくなって涙が滲む。逃げたいのに、三木さんが俺の腕を掴んでいるから動くことすら出来ない。

止むことの無い口付けは、俺の思考を麻痺させる。
いつの間にか三木さんの片手が服の中に入り込んでいたけれど、そんなことにも気付かず、俺は腕を押さえ付けられた格好のままで身体を強張らせていた。
触られていると気付いたのは、胸元を抓まれた時だ。余りの衝撃に身体がびくりと大きく跳ねて、同時に三木さんが俺から顔を離して笑った。

「相馬は敏感なんだなぁ」

いやらしい表情で俺を揶揄う三木さんも、余裕は無さそうに見える。
また顔を寄せられたから、口付けられるのかと思ったのだけれど、そうではなくて三木さんが俺の頬に自分のそれを擦り寄せてきた。

自然と三木さんの唇が俺の耳元に近付く形になって、「今度は相馬の声聞かせろよ」と熱っぽい声で囁かれた。
恥ずかしさの余り「無理です……」と答えてしまったけれど、勿論そんなことを三木さんが許してくれる筈も無く、三木さんの手が下に伸びて服の上から触られた。変な声を出してしまった気がする。

でも三木さんが「可愛いな、相馬は」と言ってくれたから、俺は勇気を出してもう一度口付けをして欲しいと強請ったんだ。

2016.06.24
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