金平糖
「金平糖、食わせやろうか?」そう三木さんに言われて、良いんですか? と喜んでいたら、三木さんが金平糖を歯に咥え、意地の悪そうな笑みを浮かべた。
金平糖のせいで喋れなくなっているから何の指示も出してこないけれど、おそらく俺に食べさせてくれると言っているのは、今三木さんが咥えているもののことなのだろう。
普段余り俺に構ってくれないくせに、時折思い出したように俺で遊ぶのを酷いと思っている。けれどそれよりも嬉しさの方が強くて、結局俺は三木さんに近づいた。
俺より少しだけ背の高い三木さんの、着物の袷の部分を両手で掴む。そこに力を入れて、三木さんの顔を俺の方へと引っ張った。咥えられている金平糖を目指して近づく俺の唇に、三木さんのそれが唐突に押し付けられる。直後に口内に広がった甘みと、それを溶かすように追ってくる舌の熱が、他に何も考えられないほど俺を息苦しくさせた。
知らぬ間に腰に回されていた三木さんの腕が、俺の身体を強く引き寄せる。同時に口づけが深められた。俺が感じているのは、金平糖の味なのか、三木さんの味なのか……
こんな高価な菓子を、俺なんかがこの先食べられる機会は無いだろうけれど、でもきっとそれよりも、俺は三木さんと触れ合える時間の方がずっとずっと大切で、そしてもっとも甘いのだ。
2017.06.30