終わらない嘘*
そうまくん、と呼ぶ甘く掠れた声が俺から身体の自由を奪う。実際に後ろから抱き締められているというのもあるけれど、この声が無ければ俺は抵抗していたと思うから、やっぱり俺の自由を奪ったのは声の方だと思うんだ。
「あの、今着替えてる途中なんで、少し離れてもらえませんか?」
そう頼んでみたものの、嫌だよの一言で俺の願いは一蹴され、首筋に温かくて柔らかい感触が押し付けられた。
「わっ、な、何するんですかっ」
振り払うように首を振っても沖田さんはどいてくれなかった。どころか「相馬くん、ねぇ今からしようか」と熱くなった下半身を擦り付けてくる始末だ。
何故、この時に思い出したのか自分でも分からない。けれどその瞬間に思い浮かんだのは、沖田さんと斎藤さんが微笑み合う姿だった。
「……沖田さんは、もしかして斎藤さんともこういうことをしてますか?」
「え、一君と? やだなぁ、するわけ無いじゃない」
そう言ってくすくす笑った沖田さんが「僕がこんなことするのは、相馬君とだけだよ」なんて熱く囁くから、俺の芯にも結局熱が灯ってしまった。
押し付けられた畳の、青い匂いに襲われる。
沖田さんが動く度に、俺は高い声を上げながら畳に爪を立てていた。俺の爪でこじ開けられた隙間から、それまで閉じ込められていた真新しい匂いが鼻を突いて、ともすれば酔ってしまいそうだ。
「着物が汚れちゃうから、中に出すね」
了承なんてしていないのに、沖田さんは当たり前のように中に出した。出されてる間も震えた声を上げ続けている俺は、きっと喜んでるようにしか見えないだろう。
満足気な溜息を漏らした沖田さんは「大丈夫、立てる?」と手を伸ばしてはくれるけども、抱き締めてはくれないんだ。
その理由に俺は多分気付いている。だけど確証は無いし、出来たら知らないままで居たいから、優しいフリをする沖田さんに騙されたフリをしている。
でも、俺は知ってるんです。貴方が大切な相手にだけは手が出せないんだってことを。
だから沖田さんが本当に好きなのは、
――え、一君と? やだなぁ、する訳無いじゃない――
少なくとも、俺ではないんですよね。
2016.03.17