ひらり香る夢
三木組長と関係を持ったのは、ひと月程前だっただろうか。こんなことをしていても、愛されていないことには気付いている。
夜はそのまま隣で寝ていくのに、朝を迎えて隣を見ても、三木組長が居たことなど一度も無かったから。
けれど布団には組長の残り香があって、俺はその香りに包まれて二度寝をする。夢の中では愛されているからだ。
虚しいなんて思わない。夢の中の俺にとって、目覚めるまではそれが現実なのだから。
組長の使っているお香を、先日無理を言って分けて貰った。
だけど俺しか居ない空間でそれを焚いても、三木組長の体温が無い。三木組長から匂い立つ、組長自身の香りが足りない。
だから良く似た香りにはなるけれど、決して同じ匂いにはならなかった。
俺はまた目を瞑り、薄く開いた障子から入り込む細い風に、ひらりと舞った三木組長の香りを抱いて、幸せな幻想を今日も見るのだ。
2016.03.24