不完全結合*
三木さんの顔が近付いてきたから、俺は口付けられるものとばかり思っていた。けれど予想に反してその唇は俺の顔を逸れ、代わりとでも言うように自身の熱を俺の中へと挿入してくる。
塞がれることのなかった俺の口から、高い喘ぎ声が漏れた。
幾度と無く繰り返された行為で、俺の身体を知り尽くした三木さんは、最初から俺の弱い部分を狙ってくる。
止めて下さいと弱々しく言葉にすると、三木さんは口端を上げる。意地の悪いその表情はやけに妖艶で、俺は視覚的にも犯される。
三木さんが俺の腕を掴み、布団に縫い付けるように押さえ込む。
そうやって俺の動きを制限した上で、下から荒々しく突き上げてくるから、俺は泣き叫ぶような声を上げることになった。
何度やっても慣れない快感。
終わってしまえばまたしたいと思うのに、渦中に居るとこの快感から早く抜け出したいと思ってしまう。
気持ち良過ぎて狂ってしまいそうになるのが、とても怖い。
閉じられない口端から、唾液が筋になって零れていく。
拭いたくとも俺の手は三木さんに捉われて自由になんてならない。
それどころか三木さんと俺の間で擦られて、俺の起ち上がっている熱が限界に近付いているのが分かった。
触って下さい、
きっと俺は、みっともないほど乱れている。
そんな状態で必死に懇願しても、三木さんは決して触れてはくれなかった。
我慢が出来ず、繋がったままの下肢をあられもなく蠢かしながら、俺は敬語を使うのも忘れて「触って、触って」と繰り返す。
けれど三木さんは、荒い息を吐き出して腰の動きを速めてくるだけだ。
彼は俺が後ろだけで達するのを見るのが楽しいらしい。
何て意地が悪いのだろうと思う反面、三木さんのこんな顔を知っているのは俺だけなのだと思うと、いつも堪らない気持ちになる。
俺の中に、三木さんの熱を感じた。同時に、俺も達していた。息の整わない俺を見ながら、三木さんがいやらしい笑みを浮かべる。
「相馬は、まだ足りなそうだな?」
肯定も否定も出来ない程体力を奪われていた俺は、返事が出来ずに黙ったままでいた。
そんな俺の中から、三木さんのものがずるりと引き抜かれる。離れてしまう三木さんに、きっと俺は物欲しそうな顔をしていたんだろう。
「どうして欲しい?」
三木さんの目が、楽しそうに細められる。
俺の腕は未だ拘束されたままだ。俺がもう一度して欲しいと言えば、直ぐにするつもりでいるに違いない。
勿論それもしたいのだけれど、俺が欲しいのは――
「……を、して、下さい」
「あ? 何だって?」
「く、口付け、を……」
俺の言葉に三木さんは一瞬面食らったような顔をしたけれど、直ぐに優しそうに微笑んだ。
そういやしてなかったなと言って、それはそれは甘い口付けを三木さんはしてくれた。
やっと三木さんと心まで繋がれたなと、俺が喜んでいることになんてきっと、気付いてはいないのだろうけれど。
2016.06.02