どうしよう。どうしよう。こんな綺麗な子の、それも目の前で、人を殺してしまった。ゴンを助けるためなんて嘘が通じるわけがないことなんてわかってる。だって、神様に嘘は通じないのだから。

「なんで……」

 呆然とした声に息を呑む。逃げなきゃ、違う、早くここから、ゴンの前から立ち去らなきゃ。ゴンをとられると思って人を殺すなんて、やはり私は綺麗にはなれないのだ。

「待って!」

 後ろに引いた足が止まる。血に濡れた手を掴もうと伸ばされた手を、私は振り払ってしまった。でもこれは仕方ないことだ。神様がこんな汚いものに触っていいわけがない。

「ねえ、ちゃんと理由があるんだよね? ユキが理由もなくこんなことする人じゃないってこと、オレは知ってるよ」

 違う、違うー!!

「私はそんな人じゃない!! 綺麗じゃない! 汚い!! ゴンは私のことなんて、何ひとつわかってない!! 知ったような口聞かないで!!」

 吐き出したあとでハッとした。何てことを言ってしまったんだ私は。汚い行為を見せてしまっただけでなく、汚い言葉まで浴びせてしまった。ごめん、違うと訂正しようとゴンを見ると、彼は眉を下げて笑っていた。

「……そうだね。オレはユキのこと、何も知らない。知ってる風な口を聞かれるのは嫌だよね」
「ちがっ……! 私は!」
「でもユキだって、オレのこと何も知らないのに綺麗だと思ってる」

 違う、違うと幼子のように首を振る。確かに彼のすべてを私は知らない。でも断言できる。ゴン=フリークスは、本当に綺麗で、私にとっては神様なのだ。

「オレはユキが綺麗だと思う。ユキのことは何も知らないけど……人を殺すところなんて初めて見たけど……でも、ユキは綺麗だよ」

 ほら、彼はやはり神様だ。こんな私のことを綺麗だと言う。人殺しを綺麗だと言い、その目は私を許すかのように優しい。

「……ゴンの方が、綺麗だよ」

 伸ばされた手を、今度は振り払えなかった。






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