リルとメリオダスの出会いはバルトラ王を介してのことだった。
というのも、王がメリオダスを呼び出すなり「会わせたい者がいる」と言い、あの隠れるようにしてある部屋へメリオダスを案内したのだ。何も心当たりがなかったが、まさか王女を紹介されるなんて想像できない。
しかしそこはメリオダス。持ち前の明るさで呆ける王女に笑いかけた。

「オレはメリオダスだ。よろしく!」
「……リル・リオネス、です。よろしく…」

そう告げた王女、リルはベッドで上半身を起こして頭を下げた。医学に心得のないメリオダスでも一目見て病弱だとわかるほど、彼女の体は頼りなかった。
メリオダスが少し力を籠めれば折れてしまうだろう細い腕を見ていると、王が娘の頭を撫でながら自分を紹介した。

「リル、メリオダスは騎士団の団長なんだ。といっても今は任務に出ることは稀だ。お前は話し相手がほしいと言っていただろう?メリオダス、時々でいいからこの子と会ってやってくれ」

後半の己に向けられた言葉になるほど、と相槌を打つ。次いでいいぞ、とお使いを頼まれた時のような軽い声で返事をした。
するとリルが弾かれたようにメリオダスの顔を見る。目を見開く王女をメリオダスも見つめ返すも、目が合った瞬間にそらされた。

「どした?」
「……いえ」

変な人。
リルがメリオダスに抱いた第一印象だった。




暗い奴、というのがメリオダスのリルに対する印象だ。しかしそれは会話を重なる内に変わっていく。

きっかけはリルがお菓子を食べたいと言ったこと。
侍女に頼むつもりが丁度休憩中だったため厨房におらず、メリオダスが腕に寄りをかけて作ったのだ。……作ってしまったのだ。ご存じの通り彼の料理の腕は最悪である。
それを知らない哀れな王女は渡されたそれを何の疑いもなく口に入れた。途端に眉間に皺ができる。滅多に笑わないくせに不快なときは顔に出る王女はハッキリと不味いと言った。
メリオダスとしては予想通りの反応だ。自分の作ったものがすべて不味いことくらい承知済みである。だからリルはもう食べないと踏んでいたのだが、彼女はあろうことか再度菓子を食べた。これには流石のメリオダスも止める。腹を壊させたら大変だ。

「……不味い…」
「だからそう言ったろ。もう止めろよ」
「…でも、」
「?」
「…………ありがと」

笑ったわけではない。それどころか彼女の表情筋は一切動いていない。
しかし白い頬が赤く色付いた瞬間とか、忙しなく動く瞳だとか、そういう人間らしいところを見て、メリオダスは初めてリル・リオネスという人がわかった気がした。
思わず「また作ってやる」と言った言葉は拒否されたが。







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