幸せ/em
光の降り注ぐ道を二人でおしゃべりしながら歩く
私はふと目に入る光景に足を止めた。
声が無くなったのを不審に思ったのか、振り返った彼はその距離二〇センチほどまで歩み寄る。
「どうかしました?名前さん」
『見てください。あそこ。』
私の視線につられて彼も同じ方向へ目を向ける。
『わ…すごく眩しい笑顔ですね』
真正面から太陽に祝福される彼女たちは夏の海みたいに輝いていた。
『結婚式...きらきらしてますね。すごい。良いもの見ちゃった。』
「ふふ、幸せをお裾分けしてもらいましたね。」
その日はいつもと同じ道を歩んだのに、景色は何処か違って見えた。
恒例のお散歩から二人で暮らす部屋に戻ると、急に暗い所へ来たためかぼやりと視界が霞む。
でも、なんだろう。この不思議な高揚感。
陽射しで少し顔が暖かくて、でも足元のフローリングはひたひたと心地よい冷たさを持ち、何か満たされたこの空間は。
子供の頃によくあった気がする。何かは思い出せないけれど。
「名前さん、」
「干したてほかほかのお布団でおひるねしちゃいませんか?」
『わ、すっごく魅力的な提案ですね』
彼の腕から解放されたのを見計らい、そこ目掛けて飛び込む。
『そりゃ!』
ばふん、とダイブすると、ふかふかでやわらかいお布団が私を出迎えた。
ばふ、隣に衝撃が加わる。そちらへ顔を向けると、お布団を堪能しているエーミールさんと目があった。
***
「…幸せですね」
『えぇ、とても!』