「ん~、こっちやろ!」
ぱっと手札からJOKERの文字が消える。
「あああああ!」『よっしゃあ!』
暇つぶしに雑に提案したババ抜きだがこうなると案外楽しいものだ。
「ちょっと待て…ちょっと待てよ…?」
彼が二枚しかないカードを必死にくっている。先程で上がるつもりだったのだろう。
額には少し冷や汗が滲んでいる。
どれだけシャッフルしようと運に頼るのみだ。何も問題は無い。
「はいっ!」
ばんっと掲げられる二枚のカード。
分厚いレンズの奥の彼の視線で.…というか普通にレンズに写っている。詰めが甘い。
彼のこういうところが好きというばそうなる。
にやり、余裕の笑みを浮かべ一枚のカードに手を伸ばす。
『こっちだぁ!』