鉄屑のディストピア/ut

※軍パロ死ネタ

目を覚ますとそこは薄暗い白の天井だった。
規則的に鳴る機械音をBGMにゆっくりと思考を整理する。



夢を見た。
その人は硝煙が肺を焼くような戦場で鉄屑にだらしなくもたれ紫煙を燻らせている。どこか懐かしさを覚えるようなその姿に、なぜか重い体を引きずり向かっていた。

ふう、彼が紫煙を吐く。

「もうあかんみたいやわ。」
『…なんで? まだ意識はある。』

彼の影がじわり、じわりと濃くなっていく。

「いや、あかんよ。自分の体やし一番わかるねん。』
『とりあえず煙草止めなよ。治るものも治らなくなる。」
「ま、最後の晩餐やと思って許してくれ。」

彼の手が震えているのがわかった。やっぱり辛いんじゃないか。

『なぁ、僕が死んでも泣かんといてな。涙は女の武器やなんて言うけどな、もう武器なんて持たんくていいんやで」

サイレンがけたたましく叫ぶ。これが夢の中で鳴っているのかどうかわからない。頭が痛い。呼吸がくるしい。

夢を見たんだ。あれは夢だ。どうかお願い、ただの悪夢であってくれ。

ズキズキと焼けるような痛みが嫌という程鮮明にわかる。痛みを理解したくない。夢の中では頬っぺをつねっても痛くないんでしょ。



「きみに涙は似合わへんよ。」


トップページへ