『なあ、今日は何すんの?』
ネオンがてらてらと彼女の瞳を揺らす。
『今目はゲーセンに行く。でかいぬいぐるみを取る。』
煙たい街並みに背を向け健全な蛍光灯の下へと二人歩いていく。
『私UFOキャッチャー結構自信あるで、人のお金やったら尚更やわ。』
彼女が口を開く度に赤く塗りたくったリップが目につく。
わざとらしく顔を顰めるとそれに気づいたのか
『これ似合ってるやろ? てゆーか服の好み合わへんのなんて最初会った時から知っとったやんけ、今更やん?』
なんて生意気な口を叩く。
「この前服買えっつって上乗せしただろ。どうせ違うとこに消えたんだろうがな」
せーかい! なんてけたけた笑う彼女にももう慣れたものだ。
ごつ、ごつ、と厚底の靴が音を鳴らす。
『私マジで上手いからビビんなよ。』
かつ、と白く輝く騒音の前で革靴の音が止まる。
「なんかカッコイイこと言え。」
『はあ?なんて言うんやっけ、こーじょー?』
「口上な。」
『じゃ、行きますか。子供の延長戦!』
***
『よし、取れた取れた。』
もふりと落とし口にぬいぐるみが落ちる。
「ホントに上手いんだな。てっきり金搾り取るんかと思ってたわ」
備え付けの袋に先ほど取れたそれを放り込む。
『私じゃなくて機械に搾り取られとったら意味ないわ。』
『どうですか? 満足致しました?』
ポッケに手を突っ込みながら他の台を物色している態度からいかにナメられているかがわかる。
「うむ。今日は解散としよう。」
「じゃ、今回の分だ。」
ぱさ、と安っぽい効果音とは似つかわしくない価値を差し出す。
『おー毎度あり、毎回ちょー楽で感謝しとります〜』
ある日見かけた一件のツイート。一万、いや三万、とかいう下半身しかないような野郎共に群がられている様を見て何故か指が動いていた。
***
『これパパ活って言うん?』
「世界征服と言え。これは活動費兼前準備だ。」