9/22 sha誕
カチャカチャ、と台所の物音で目が覚める。
「ん、ごめん。起こしてもうた?」
『ん…んあ?』
勢いよく時計を見る。短針はとっくに真上を過ぎていた。
『ご、ごめん。本当はぴったりにお祝いしようと思ってたんだけど、』
狼狽える私の言葉を遮るように彼が優しく微笑む。
「んふ、いやわかっとってんけどな、どうすんねやろなーて思ってちょっと意地悪してん」
ごめんごめん、なんて温かい手で撫でられてまた恋に落ちる。
『…誕生日おめでとう。素敵な一日…いや、素敵な一年になりますように。』
彼の予想通りになっていることに少し恥ずかしくて視線を斜め下に逸らす。
「う〜ん、一年だけじゃ足りひんなぁ」
『ずっと!ずっと幸せ!』
「じゃあ、」
するりと手を取られる。
「今年も、来年も、ずーっと先も、俺の隣におってくれる?」
シンプルだが可愛いデザインの指輪が薬指に輝く。
『…うん、もちろん!』
それも涙でぼやけてしっかりと見えなくなってしまった。
「っはぁ〜良かった! めっちゃ緊張したわ。」
「改めて、これからもよろしくな。」
『こちらこそ。驚いたからこれからは事前に言ってね!』
「サプライズの意味ないやん!」
***
『あ、誕生日プレゼント用意してたから今渡してもいい?』
「え、なになに〜?」
がさ、と小さな紙袋を手渡す。
「ん…? まさか」
『うん、指輪です。』
渡すタイミングがあって良かった。
「…似てる夫婦は円満になるらしい!」
『やば、ちょー円満だね!』
街が眠り、皆の一日が終わる頃、私たちは新しい道を歩み始めた。