MC人狼リーグ世界線、後輩Nakamuと。backnumberさんのハッピーエンドを聴きながら書かせていただきました。
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風が木々を揺らす度に桜のカーテンが靡く。
「卒業、おめでとうございます。」
まるで漫画のワンシーンみたいに鮮やかに、先輩は振り返る。
『ありがとう、わざわざ言いに来てくれるなんて...嬉しい。』
「名前先輩にはいっぱいお世話んなったんで。シャオ先輩も囲まれてるし...」
視線を斜めにずらすと人だまりにやかましい先輩の顔。なんだかんだでいい人だし、話しかけれるのは大分後になるだろう。
『あー...人気者だもんね。』
そう言って髪を耳にかける先輩はそりゃもう綺麗で、俺は一生この恋を思い出す度にこのシーンを思い出すんだろうなぁ。なんて諦めにも似た感情を抱く。
「先輩...その、ありがとうございました。短い間でしたけど...」
話しかけるための台本なんてとっくに白紙になっていて、ありきたりな台詞を吐く。
『それは、先輩後輩として?それとも、付き合ってたことかな。』
視線が交わらないことがもどかしい。
「...どっちもです。」
やばい、泣いたらかっこ悪いぞ。大丈夫、俺。泣くな。
『こちらこそありがとう。楽しかった。いい思い出だよ。』
うっすらとぼやける視界をごまかすように下を向く。そんなことしなくても先輩は俺の方なんて向いてないのに。
あの時の春の俺と何が変わったのかな。卒業したら会えなくなりますね。それでも好きです。会いに行きます。なんて言って、貴方の未来を塞げてしまえたらいいのに。先輩の横顔が、そんな言葉は卒業式の儚い風に押し流されたらしいことを告げる。
「...先輩、」
向かい合う先輩の表情は、俺が泣いていないことに安心しているように見える。
一瞬だけ交わった視線は、俺に恋を思い起こさせるにはあまりにも充分だった。
『...シャオロンくん、』
再び逸らされた視線の先には、先程の人だかりから解放されたシャオロン先輩の姿が。
今すぐに抱きしめて、貴方がいれば何もいらないって言って、離さないで。
『手、振ってるよ。』
...なんてね、嘘です。
「さよなら。」