ショートケーキ/shp
「なぁ」
『...何』
「いや、なんでもない」
そう言って彼は部屋を出ていった。
いつもよりあからさまに機嫌が悪い私に困惑するショッピ。いつもはふてぶてしいのに気を遣わせてるのが申し訳なくなって、もっと自分が嫌になる。
彼が居なくなった分だけ深く沈むソファに、そのまま溶けてしまいたくなる。
『...』
手に持っていたスマホをクッションに投げ飛ばして、深くため息をついたって、自己嫌悪が強くなるだけなのに、しないとやってらんない。
なんだか頭も痛くなってきた。私は潤む瞳を閉じてそのまま眠った。
「...あ、起きた?」
のそりと起き上がると、かけた覚えのないブランケットがずり落ちた。
『おはょう...』
腫れぼったい目を擦って、回らない頭を回す。
「ふ、声全然出てへんやん。」
ショッピは瞼を擦る手を握り、代わりにタオルにくるんだ保冷剤をあてた。
「ちょっと溶けとるけど。」
『うちに保冷剤とかあったっけ?』
「あれ、」
そう言って顔を向けたテーブルの上を見ると、つやつやのショートケーキがあった。
『わ、美味しそ〜...!買ってきてくれたの?』
「まぁ、すぐそこのやけど。」
『食べよ食べよ』
さっきまで機嫌が悪かったのを忘れていそいそとお皿の準備を始める。
「...なんか俺、怒らせたかなって思っててんけど」
『え?あぁ、ちょっと人間関係でヤなことあって...八つ当たりしてごめんね。ケーキありがとう』
「...ふ〜...安心...はぁ...」
そう言ってさっきまでのシャキっとした態度とは一変、でろでろに座るショッピを見てちょっと申し訳なく思う。(正直思ってない、面白い。)
『よし、食べよ!いただきます』
「いただきます。」
辛い時は甘いものと優しい彼氏に限る。これ鉄則。
「ケーキくらいで元気なってくれるかわい子ちゃんで良かったわ。」
そう言って笑ってくれる彼を見ると、幸せをおなかいっぱい感じた。