『一匹しかとれなかったね、』
水面を通る光が君の頬をきら、と照らす。
『…聞いてる?』
ゆらゆら揺れる金魚の尻尾を見ていた君がふいにこちらを向く。当然だが視線は君を見つめている瞳と合う。
『そんな見つめないで?…えっち』
橙色の光に艶を出す君の唇がやけに艶めかしくて、でも瞬きをしたらこの視線が二度と交わらないような気がして。
「名前」
『ん?…ん』
熱を持った手のひらで君の目を覆って口付ける。視線が交わっていなくたって、この指が、糸が、心が交わっていればいっか、
なんて考えていたら真っ赤に頬を染めた君はまた俺色に染まっていくのだ。