白百合と蝶/em

「...探しましたよ」

風に揺られた白百合がざぁ、と音を立てて波を作る。その中にひとつだけふかふ
かに焼けたパンのような色が靡いている。

『エーミールさん、』
「名前さん、離れないで下さいよ。白いワンピースが白百合に馴染むんです。」
『ふふ、』
『見つけていただいて、ありがとうございます』
「もちろん、何処へ行ったって名前さんを見つけだしてみせますよ。」
『私だって、何処へ行ったって見つけてみせますよ。と言ってもエーミールさんは見つけやすいですけどね。』
「それは何故?」
『だって、蝶々のようにきらきらしてるから..
飛んでいかないで下さいね。』

「もちろん。ずっと名前さんの傍に居ます。いや、居させてくれますか?」
赤く頬を染めて笑い合う2人は、もはや白百合畑では隠しきれないだろう。
ざぁ、と音を立てて可憐な花を靡かせているのは、まるでやれやれ、とでも言っているようだ。


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