「あっっっちぃ...」
まるで溶けそうな暑さの中、陽射しに照らされながら洗濯物を干している時ほど憂鬱な時間は無い。
というか既に体の表面が溶け始めている。と思う。
太陽に晒されたアスファルトの上には陽炎が見えるし、ビビットな緑の下では蝉が愛を求めている。洗濯物を揺らす風は生温く───
ちりん
ふと音の方向を見ると、涼やかに風鈴が揺れていた。
「(あれ、お隣さん風鈴なんていつの間に...というか独り言聞かれてたら恥ずいな)」
ちりりん
まぁ、気分的には、ちょっとだけ涼しいかも?
ピンポーン
今度は風流とは無縁の機械音が玄関から響く。
「おい大先生!!はよ開けてぇや!!あっっっっっつ!!」
「おっっ前は声でっかいねん!余計暑なるわぁ!」
「いや、まぁええやんけ。お隣さんも居らへんのやろ?」
...ん?
「前に隣空き部屋やから実況しやすいわ〜みたいなん言っとったやん。あれ?越してきた?」
表札は無かったはず...
ちりん
...涼しくなるどころの話じゃない。