生まれ変わっても/ci

※軍パロ死ネタ


「なぁ、そんな泣かんといてや。」

望んでもいないのにぼやける視界はどんどん
君を薄れさせていく。

「大丈夫やって、絶対、絶対にまた会えるから」
『やだ、お願い、行かないでっ…』

君の鼓動がどんどん遠いところへと行ってしまう。
紅く濡れた君の口がゆっくりと動く。

「…笑って。幸せに、生きて…」

引き攣る口角を無理やり上げる。
上手く笑えてる筈なんて無いよ。こんなにたくさん涙を流して、まるで道化師じゃない。
どうせなら、もっと綺麗な私を最期に見て欲
しかった。

君がいない世界で、幸せになんてなれないよ。

***

ぱち、開かれた視界は朝6時の光を拒んだ。
いっも、朝起きて、会社に行って、心を縛り
付けて眠りにつくだけの繰り返し。

思えば前の世界だって、君に会うまではこん
な日々だったよ。

『あ、そういえば…』

最近、小さな楽しみを見つけた。
スマホを立ち上げ昨日投稿された動画を開く。

《気付いてくれた!》

聞こえてくる声に手の力が抜ける。
カランと落ちたスプーンは私をまぬけだと笑
っているのだろうか。

《どうも皆さんこんにちは、》

今まで一時も忘れなかった。ずっとずっと、
生まれ変わったって探してたあの声。

『…チーノ…』

私の、初恋の人。


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