マーシャさんの禁断恋愛企画(前編リンク) (後編リンク)にて書かせていただきました。
企画ページとこちらではエンドが少し変わっておりますのでぜひお楽しみくださいませ。
▼以下本文
会場が熱気の渦に包まれる。
誰もが正気を失い、ありとあらゆるモノを金銭で所有する。
甲高い女の声、しゃがれた男の声、それを纏めてちぎり捨てるような木槌の音。
『最高金額は───!』
心臓が大きく脈動するのを感じながら声を張り上げる。
沸き立つオーディエンス。これが私の生きる舞台だ。
***
「おーい、お姉さん?」
オークションが終われば"商品"の点検をするのも仕事の一つだ。
私が雇われているこの会場では絵画やらよくわからん壺やら──人間やらを売買している。
冷たく湿った固いコンクリートの上を履きなれた革靴で歩く。
「なーなー、聞こえてない?」
ガシャン、と1人だけの檻にもたれ掛かるその男は言う。
『商品と話すことは業務内容に含まれてない。』
「えーそんな事言わずに!今日売られてった子ら居ったやん?あの同じ部屋やった。あの子らにお昼あげたからめっちゃ腹減っててさー、なんか食べるもん無い?」
手錠のついた手で身振り手振りを使って話す姿は何とも滑稽だ。
『今はただの商品でも元は国家の役人だったんでしょう。空腹ぐらい我慢したら?あとその態度も見苦しい。』
元々が裕福な環境に居たからちょっとの空腹でも耐えれないのか。これだから役人は...
「あ、今これだから役人はって思ったやろ。」
図星。
「図星ちゃう?んはは」
小さく息を吐き振り返らずに歩みを進める。
重たい扉を開け次の区画へと向かう。
隣国の幹部の男を入荷したと聞いた時はもう少し商品価値に期待もしたものだがあれだとそう値上がりもしないだろう。
敵対関係にある政党にはサンドバッグとしてでも売れるか?あの細腕じゃ力仕事は当てにならないだろうから宣伝しないで...顔は整ってたな。観賞用か。
当日の進行を考えながら暗い廊下を進む。次の区画は...絵画か。盗みの的にされやすいから気を引き締めねば。
***
「うー、さむ!」