「おねーさんおはよー!」
点検は朝も行う。ロープライスの商品は眠ったまま冷たくなっているなんてザラだ。
空腹で死んでいるかと思ったが残念ながらそうでもないらしい。
「おねーさんってなんでこの仕事してんの?結構誇りとか持ってるぽいけど」
『...元は私もそっち側だった。けど今の会長が見回りしてる時に自分でめいっぱい宣伝した。自分の利用価値をね。』
こういうヤツにはさっさと答えてやった方が早く興味が薄れる。こんなやつの相手を長くしてるとオークションの前に体力も気力も使ってしまう。
「へー、宣伝上手ってワケ?俺も自信あるで。」
『じゃあ出品された時に自分で話しといて。私は木槌だけ叩いとく』
こいつずっと喋ってるな...悪手だったか。
「いや誇りどこいってん!俺の宣伝はなんて言うん?」
『サンドバッグに最適です。』
「やばすぎん?てかもう行くん?えぇ、もっと喋ろーやぁ」
『お前と喋ってるとキリが無さそうだし』
無人の檻をいくつか過ぎ1つしかない出入り扉へ向かう。
今日の目玉は確か骨董品だったな。マニアの常連が何人か来てるだろうからそこが競るだろうな。あとでご贔屓にしてもらえるよう挨拶に行くか。
『おねーさん、俺っていつステージ行くん?』
ドアノブに手を伸ばした所で呼び止められる。
他の会場がどうかは知らないがここは目玉商品には大体の日付を言ってもいいことになっている。集客のために前々から決まっていることもあるからだ。こいつの場合は...
『明日だ。国の要人が何人かお見えになる。』
「ふーん...明日ね。オーケー、オーケー。」
脱走の手口でも考えているのだろうか。...そんな頭が回るような感じではないが。
重たいドアを押す。
さぁ、今日も熱狂的なステージに上がろう。
***
「明日らしーでぇす。一日中ゴロゴロしときますね」
「そのまま冷たくなっても知らんぞ」
「しゃーない、筋トレでもすっかぁ」