ぱしゅ、

全ての音を消し去るように振動が響く。頭を撃ち抜かれた国のお偉いさんもただの肉塊となりごろごろと階段を汚く転げ落ちる。

「はいどーも、不当な人身売買が行われてるってんで悪名高き隣国から派遣されて来ました。お前らが最期に見る景色になるイケメンでーす」
「どうせやったら最期は綺麗な景色の方がええやろ。ってことで任した」
「いやこの人数は無理あるくね!?ふふ」

逃げ惑う奴らの言うことによると隣国書記長に近接隊エースらしい。警備隊はどうした?決して少なくはない数だったはずだ。まさか、

『全部倒してきたのか?』

するり、と右手から木槌が抜かれる。
目線を上げるとここ数日間、見慣れた男のしたり顔があった。

『おまっ...手錠は...』
「あんなお粗末な手錠クソちょろすぎて不安なったわぁ!てかそんなんどうでもよくない?」


こんこん、

聞き慣れたその音は普段より随分と小ぶりに鳴く。

「いくら?」
『...はぁ?』

ひりつく喉からやっとのことで掠れた声を出す。

「おねーさん、いくら?」
『なめてんの?私は商品じゃねーよ。』
「こわ。立場わかった方がええよ?手錠無いとわからんかなぁ。」

いつの間にか静かになった会場からステージに上がる影が二つ。

「終わったで。そっちは何しとんねん。」
「オークションですよ。殺しより場に合ってるでしょ?」
「あーそいつな...資料にあったわ。あんたも狭い世界で生きてますなぁ」

ステージ上なのに舌が回らない。

「外から見たらこんな場所違法も違法。いつ潰れるか賭けとる奴もおったぐらいや。」
「買うんやったら自分の給料で買えよー」
「えぇ、どこに払うん?ただでええやん!」
「ウチは奴隷とかあかんで。引き取るんやったら雇いや」
「んー...どうしよかなぁ」

心臓がばくばくと脈打つ。今まで味わってきた興奮とは明らかに違う。何か愉しそうに喋っているがまるで頭に入ってこない。

「あ、ええの思いついた。」

自由になった手を使って視線を強制的に上げさせられる。冷えた汗が喉元をつたう。

「俺さぁ、おねーさんの見た目すげぇ好みやねん。そんで俺らけっこー仲良ぉなったやん?金銭とか取っ払った素敵な関係になろう!うん!」

全く理解ができない。ただただ呆然と口を開けることが私ができる精一杯だ。

「うっわ性格わるぅ...」
「何コレ、恋人でええんか?まぁ素性も割れてるしいいんか...いいんか?あれ?」

恋人?私が?


どくどくと血流が勢いを増す。

...この胸の高鳴りは、


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