どようび・にちようび
 土曜日も日曜日も、それはもう猫パニックと言えば良いのか。大変な有様だった。まず、トイレ。壁紙が大変なことになっている。賃貸なのに。まあ彼のだけど。それから飛び跳ね回るせいであちこちが崩れ落ち、やっと落ち着いたかと思えばどんがらがっしゃん。尚、片付けをするのは僕と彼であるが、それでも間に合わないくらいに子猫は元気だ。ご飯も困った。買ってきたウェットフードを差し出しても、ぷいとそっぽを向いてしまう。僕が差し出すからダメなのかと思い、漣さんに頼んでも結果は同じであった。さっさと立ち去り、窓のそばで日向ぼっこをしながら尻尾をゆらめかそる子猫。これにはさすがの彼も困ってしまったらしい。
「うーん、俺が昔飼ってた猫はこれが好物だったんだけどな……」
「この子、なかなかグルメなお嬢様なんですね……」
「確かになー。あ、あいつの名前、お嬢様にするか?」
「でも漣さん、名前つけたら愛着湧いたりしませんか……」
 いずれ、里親は見つけなくてはならない。名前なんてつけたら絶対に瞳を潤ませながらうちで飼う! と言い張るタイプだ、この人は。伊達に長い付き合いをしていない。そして、この人はそういう自分の性質を全く理解していない。
「大丈夫だって! おじょうさまだと長いから、そうだな、レディってどうだ?」
 そうして安直に名をつけられた子猫、もといレディは、そのうちすると気が向いたように漣さんの足元に擦り寄ってきている。その度に彼は嬉しそうに抱き上げたり、広いところに連れて行ってレディと遊び回っている声が聞こえる。かと思えばリビングに戻ってきて、レディは? と聞くと、気が変わったらしくて向こうで寝てる、と言う。自分なら不愉快になりそうなところだが、彼は慣れた風に自分の作業に戻っている。……見ている僕がおかしいのだろうか。まあ、この人がいる限り、僕が彼女と深く関わることもないだろう。

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