げつようび・ひる
 だが、土日が終わってからが問題だった。漣さんが仕事に行ってしまうと、僕の彼女の一人と一匹が残されてしまった。「ちゃんとレディと遊んでやれよ」と言い残されたこともある。言われたからには、僕もちゃんと遊ばなければならない。ネットで調べた即席猫じゃらし――割り箸の先に太めの紐やリボンを括り付けたもの――を、レディの前でゆらゆら振ってみる。ダンボールの屋敷に籠城したレディはそれに気付いているらしいが、気付いているのと遊んでやるのは彼女の中で異なるらしい。ぷい、と無視をされ、ゆらゆらリボンだけが揺れている。
「レディ、御機嫌斜めですか、レディ……」
「……」
「レディ……あなただって遊ばないと、運動不足になっちゃうんですよ……?」
「……」
「僕も遊べと言われた以上、遊ばないと……、」
「んにゃあ〜……」
「ひっ……」
 駄目だ。分かりやすいほど怒りを露わにした低い唸り声に、きゅっと心臓が縮まる。尻尾を低い位置でゆらめかせながら、レディはしゃがんだ僕のほうへゆっくりと歩いてくる。下手に動くこともできず、怖気付いて固まっていると、レディはそのまま僕のほうへ……は歩かず、横をすり抜けていなくなってしまった。爪がフローリングをかする音が遠くなると、ようやく尻餅がつけた。駄目かもしれない。もしかしたら本当に、駄目なのかもしれない。

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