4話

試験の終わった7月某日。私はもうすぐくるあることについて考えていた。

口に入れた飴を舌で転がす。

「…」
「眉間にシワ寄ってるんだけど」
「…どうしよう」
「何が」
「文化祭の班」
「ぼっちかよ…」
「当たりだよ!」

That's Right!!!とやけくそに返す。

いや、コミュ力が無いわけじゃないんだ、別に中学校のときは友達いたし。
そうではなく、カトルに告白している以外でのクラスメイトとの基本的な交流は「クラスメイト程度」の話や行動、あとは学年が違う先輩と後輩での部活くらいだ。部活は割と中が良いけれど同じ学年ではまるで交流がない。
そもそも私はうるさいし、おかしいと思えば口ごたえもする。空気を読むことは苦手だしよく話すのは美少年なカトルである。
つまり私は各方面から嫌われている。不特定多数だから下手に誘って相手を不快な思いにさせたくはない。

というような内容をカトルに話す。

「どうすればいいと思う?」
「まあ嫌われやすい行動してるよな」
「嫌われたくはないんだけどね」
「でも嫌われにくい性格してると思う」
「えっこれまさかの褒められるフラグ?え何私の親友くん良い奴すぎる」

私がわざとらしく口を手で覆うと殺すぞと言われる。

「ごめん調子乗った」

飴いる?と返事を聞かずに飴を渡す。

「お前が嫌われてるのはみんなお前を知らないからだろ」
「それ褒めてくれてるってとっていいやつ?いいやつだよねありがとう」

少しだけ照れている気がする。熱いか確認するために耳触ろうとしたら怒られた。

カトルは私が渡した飴を口に含んだ。

んでさ、本当にどうしよう。と私はカトルに言う。

「去年はどうしたんだよ」
「知らないの?先輩たちと部室に引きこもってた」
「どんな部活だよ」
「ボードゲーム部だよ!…いや悪意があったわけじゃないんだよ、回された仕事が雑務ばっかりでさ、なんかこれいらないことまで回されてんなーって思ったから適当な分だけやって部室へ脱出した」

ちなみにその後みんな暇になって校内全体ですごろくしてたらイルザ先生に見つかった。
もう卒業した先輩はどんなイルザ先生でも好きですよー!!!と叫んでいた。青春の風を感じたし学校全体使ってたらボードゲームじゃないね。

「いやこんなことはどうでもいいんだ、どうすれば波風たてずに我存ぜぬで文化祭をスルーできるかなんだ」
「お疲れ様」

カトルが口角を上げた。

「そんなカトルくんはどうなんですかー?」
「吹奏楽部ですることあるからクラスの出し物は事前準備だけ参加する」
「高みの見物かよ親友」
「いい加減親友呼びやめろよ」
「だったら本気でキレてみればいいじゃん」

私はどんなカトルも好きだよ、と言うと彼はさも迷惑そうな顔をしたので私は軽く笑った。きっと今カトルの耳はあったかい気がする。

いや待て、私は今何を言った。今日はもう朝に好きだよコールはしたからノルマ達成したはずなんだけど。
もしかしてノルマこれから増える…?
ええ…私の本能バグってる…

「…何してんの」

天を仰ぐように顔を上にあげた私をカトルが訝しんだ。
いやちょっと本能が…と言うとお前の脳みそごと本能壊してやろうかと言われた。
わあバイオレンス。

「…文化祭はまた部室逃げる…」
「働け」