出水には勝った

「は?お前が同じたけのこ派だとは思えないわその性格直してから出直してきやがれ」
「俺もお前がたけのこ派だということにそろそろ嫌気がさしてきた」

A級7位三輪隊奈良坂透。B級フリー隊員井伊遥。

奈良坂が煽り、分かってはいるが私がつっかかるといういつも通りの光景が繰り広げられている。

「お前は落ち着きが足りない。よく狙撃手になれたな」
「わたしは天才だからやろうと思えばなんでもできるんだよ」
「うわ…」
「なんだよ奈良坂その反応!」

とまあボーダーではこんな感じの関係性ではあるが、学校では全く交流がないクラスメイト然のような感じである。

ボーダーでは名前を言っていないし、ランク戦のときも名前を言わないようにしてもらっている。
なんならトリオン体の声少し違うらしいし。骨伝導でよく分からんけど。

何故ならいろいろ面倒くさいからというしょうもない理由なのだが、昔ボーダーだやらなんやらで一悶着あったので仕方ないと認めてもらっている。

今日は素晴らしき夏休み真っ只中である。
家で引きこもっているのもなんだったし、ボーダーに来てみれば奈良坂と会うとは。
嫌いじゃないんだよ嫌いじゃ。圧倒的に腹立つだけで。

「あ、奈良坂先輩ー!名無し先輩もいる!」

茜ちゃんが私たちを見つけたらしく駆け寄ってくる。かわいい。超かわいい。

名無しというのは私のボーダーでの通称である。みんな「お前」やら「貴様」やら「こいつ」やら読んでくるけど一応通称である。

「奈良坂、茜ちゃんちょうだい」
「日浦はものじゃないんだが」
「そこかよ。茜ちゃん、私の弟子になろうよ」
「えっええ…!?」

来て早々私の言葉に困ったらしく茜ちゃんがしどろもどろする。

「日浦、やめておけ。ろくなもんじゃないぞ」
「奈良坂次会ったらアイビスで殴るからな」
「せめて引き金を引け」

まあ茜ちゃんを弟子にもらうのはダメだとしても、奈良坂の弟子はやめときなさい、と茜ちゃんに言う。

「大丈夫ですよ!奈良坂先輩は私の自慢の師匠ですから!」
「奈良坂この子どんな手を使ってでも守り通せよ」

いい子。かわいい。尊い。思ってることと言いたいこと逆になりそうだったけど耐えた。尊い。

「じゃあまずは名無しから離れることだな。日浦、こいつから離れろ」
「奈良坂まじお前次蜂の巣だから」
「蜂の巣は玲でこと足りてる」
「お前の血筋マジでよこせ」

くそ。あとで出水とランク戦してから帰ってやる。