あまくち

「遥。あかんて、よぉ揉んだらな」
「あっ、あかん蔵っ、うぁっ」
「あかん言うたかてちゃんと解さんと」
「そんなん言うたかて……」
「遥もちゃんと美味く食いたいやろー?」
「そうやけど……我慢出来へんもん。んっ、熱い……」
「遥んち集合言うから来てみたら……お前ら休みの日ぃまで何卑猥な会話しとるん」
「いらっしゃい謙也! 何言うてんの、普通の会話やで。なぁ、蔵」
「おん。今から昼飯食うとこなんやけど。謙也の分もちゃんとあるで」
「は? 昼飯?」
「レトルトカレー。一袋350円のちょっとええやつやで。あたしの奢り!」
「なんで全部甘口なん。俺、辛い方が好きなんやけど」
「謙也、あたしの買うてきたカレーに文句あるんやったら食べんでええで」
「や、有り難く食わせてもらうけどな。それが何で揉むやら解すやらの話になんねん」
「こないだテレビでやっててん。湯煎した後は脂分が分離しとるから揉んだ方が美味いって」
「って蔵が言うからやっててんけど、熱くて揉まれへんのよー。謙也は自分の分、自分でやってな」
「別に一緒やろ……」
「謙也、カレーを舐めたらあかん。ほんの一手間で美味くなるんやったらやった方がええやん」
「遥、そんなカレー好きやったっけ」
「別に。普通やけど」
「普通でその熱弁かい」
「まぁまぁ、謙也も遥も冷める前に早よ食べよか。午後からやることあるんやからな」
「やることなぁ。いきなり部屋探し行くでって言い出すかー、普通」
「早よ一緒に住みたいやん。思い立ったが吉日っちゅうやん?」
「遥、ほんまにそれ本気やってんなぁ。俺、まだまだ先の話かと思っとったわー」
「蔵もだんだんその気になってきたんやろ? 住宅情報誌、めっちゃ付箋だらけやし」
「まぁ部屋探しで失敗はしたないしなぁ」
「あー、俺どうせやったら夏休み終わるくらいには引っ越したいなぁ」
「さすがスピスタ謙也さん! あたし、年内って悠長に考えとったわ」
「早よ住みたい言う割に案外そこは悠長なんやな」
「夏休み終わるって丁度俺らが引退するくらいやな。謙也、何でその時期なん?」
「年末やったら受験あるし、さっさと新しい環境で慣れた方がええっちゅー話や」
「あー、もう嫌やわー謙也。現実思い出す話せんといてやー。あたし萎えたー」
「おまっ、やから萎えるとか言うな言うとるやろ!」
「もう慣れたもんやろ、謙也。俺はもう諦めた」

(20120705)