世界の終わりを待っている

電話をしても無駄やろうっちゅうことは解っとった。遥が俺の言う話を聞くはずが無い。遥の財前に対する執着は半端や無いから。

財前の黒い噂は嫌でも耳に入って来た。やれ一年の水泳部に手を出したやら、自分のクラスの子は全員食ってしもたやら、三年の先輩には金を貰ってヤってるやら。

どこまでがほんまでどこまでが嘘か、確かめる気ぃも起きんかった。知れば知るほど財前と遥が付き合っとるってことに疑問が湧いてくるだけやったから。

「心配なんは解るで、でもしゃあないやん」
「しゃあない……」
「謙也が言うことももっともやで。せやけど、遥が望んでんのは財前と一緒におることや」

教室の窓でぼんやり外を眺めとったら、後ろから白石に肩を叩かれた。全てを見透かされたようなことを言われて焦った。口には出してへんかったのに、何で遥のことやって解るんやろう。

そう、遥が望んでるんが財前と別れることやないんが一番問題なんや。あいつは誰よりも何よりも、財前が好きや。それこそ他のもんを一切失っても平気なほどに。

「俺も遥が傷付くんは見たないで、でもな」
「解ってんねん、白石。そんなん……俺も見たないし」
「そうか、解ってるんやったら、もうちょい見守ってたり」

そう言って白石は自分の席へと戻った。見守る、か。それを俺がしたところで、一体遥の為になるんやろうか。溜め息を吐いて窓枠に肘をつくと、体育中の遥が目に入った。

ほんまはあんな奴止めて俺の傍におったらええと言って抱きしめてまいたい。せやけど、遥が望んでるんは俺の腕やなくて財前の腕や。体操服から覗いてるあの華奢な腕で遥が縋り付くんは財前や。

俺の気持ちはどないしようも無くぐちゃぐちゃで、遥のことでいっぱいで、胸が詰まりそうやった。遥は幸せやって笑うけど、あの状態がほんまに幸せやとは思われへん。

遥は『財前がいる世界が自分の世界』やって思い込んどるけど、もっともっと、世界っちゅうんは広いと思うんや。やから俺はこうやって窓から遥のことを眺めながら、今日もその世界が崩れることを願うのみやった。

(20120607)