愛は世界を巣食う

例えばあなたが私のことを嫌いになる日が来たとして、もしそんな日が来たとして。幸せだったかと聞かれれば私は幸せだよと答えるだろう。

あなたがくれた言葉が、指先が、熱が。その全てがその時一瞬でも私を愛してくれていたという事実で、私はこの先、一生歩いていけるから。



身体の上を滑っていく光の指はとても優しい。どうしたのかと小さく尋ねると、なんも、といつもより優しい声で笑って答える。その声が嬉しくて光の頬を撫でると、彼の口の端が少し上がる。

最近、謙也から聞いた話がある。謙也が私を好きだということ。それを知って、光が謙也に私を取られたくないと思ったということ。他の子なんて抱いても仕方無いと言っていたということ。

謙也は最後に言った。光だけじゃないと。誰よりも私のことを想っているのは光だけれど、それだけじゃないから、そういう人間にもたまには目をやるべきだと。

「なぁ、遥。もう挿れてもええ?」
「ん……」

いつもより時間をかけた愛撫に私も限界が来ていた。光の声もいつもより掠れているような気がして、彼もいっぱいいっぱいになってくれているのかなぁ、なんて考えたりする。

ゆっくりと光の熱くなったものが私の中に入って来る。ぐっと奥を突かれた後、光は何度も何度もあたしに口付ける。

いつもなら性急に、時には乱暴に入れたと同時に律動が開始されるのに、今日はいつまでたっても動こうとしない。私の体を抱き締めて、首筋や耳元に顔を寄せて来る。

「あっ……、ひか、どしたの」
「もうちょい、このままおってもええ?」
「う、ん……」

耳元でそう言われ、体がびくりと跳ねる。その時に膣に力を入れてしまったようで、光のものも反射的にびくりと一度大きくなった。

謙也の話を聞いてから、光が他の女の子と寝たという話を一切聞かなくなった。私のことをいたぶるような、辱めるようなセックスもしなくなった。

今は彼の指の動き一つからすら愛情を感じられる。愛してるとか、好きなんて言葉は無いにも関わらず。私はそれがひどく嬉しい。

「ひか、る。光、あっ、ん」
「遥ん中……めっちゃぬくい」
「ふっ、光のも、あっ、あったかい……」

ぎゅ、と体を抱き締められる。肌と肌がぴったりと密着して、まるで二人の間に隙間なんてないような気さえしてくる。

愛が返って来なくても良いのだ。光だけは、私が一心に愛を注いだとして、見返りが無くても良いと思えた人だから。

それでも彼なりに返そうとしてくれるのが可愛くて、きちんと愛してくれるのが解って、それが嬉しくて泣きそうになる。

「このまま一個になれたらええのに」
「そ、うだね……そうしっ、たら、ずっと一緒、いっ、いられるね」

光がぼそりと呟く。その言葉に心臓がきゅうとなる。私は何を不安がっていたんだろう。他の女の子にどういう風に接しているかとか、なんで私だけじゃ駄目なのかとか、今となってはどうでもいい。

ただ目の前の光は私を、私だけを愛してくれている。声が、指が、汗が、熱が。その全てがそれを物語っていることに、どうして気が付かなかったんだろう。

「あっ、光、なんかっ、へん、変っ」
「んっ……めっちゃ締まる。遥、どないしたん?」
「何か、あっ、いつもとちがっ、あ」
「動いてへんのに?」

子宮から昇って来る快感とは別の何かが私を襲う。いつもの肉体的な快感ではなく、これは精神的な快感に近い気がした。

光のものが私の中いっぱいになっている。それが嬉しくて、輪郭を感じる度に頭の中がふわふわして来るような感覚に陥った。

これは、光の愛だ。私の世界は愛で満ちあふれている。その愛は全てを飲み込んで、何もかもをどろどろに溶かしてしまうほどの熱を帯びている。

その熱に、このまま輪郭も何もかも解らなくなるくらいどろどろに溶けて、二人で一つになってしまえば良いのに。そうすれば私と光の愛で、この世界の全てを満たすことが出来るのに。

「光、すきっ、い、んぅ」
「はっ……遥、俺も、すき」

謙也は言った。光だけじゃないと。他のものにも目を向けるべきだと。でもやっぱり、私には光だけだと思うのだ。

私はこの世界の全てを愛することが出来る人間になれる。光がいれば、光さえいれば。

(20120715)