「夏油さま来るって!!」
「え…っ!」
2人にカレーを食べさせながら学校生活の話を聞いていると、かわいい着信音がして奈々子ちゃんが目を輝かせる。連絡したって言ってたけどまさか夏油くんに直接していたとは思わなかった。きゃっきゃっと騒ぎながら見事は指さばきで返信をしている。現代っ子怖い。
てっきり宗教団体の世話役か誰かと思っていたんだけど、この2人に限ってはないか。なぜ気づかなかったんだろう。
「夏油さまもカレー食べるかな?」
「甘いのあんまり食べないよね?でもなまえが作ったから食べるかも」
「まだ残ってたよね、なまえ!!」
「うん。持って帰りたいって言ってたから多めに作ったよ」
「奈々子、今日泊まっていいかも聞いて」
「わかってるよ、美々子。着替え持ってきてもらお!」
「え、2人とも明日学校は?」
「「休む!!!」」
「えっ!」
めちゃくちゃ元気よく宣言された。あれもこれもと2人で返信内容を考え、送っている。うん、2人がいいならそれでいいけど置いてけぼり感が半端ない。
「なまえがいいって言うなら泊まっていいよって!夏油さまが!」
「なまえ、泊まっていい?」
期待と不安が困った目。捨てられた猫にも思えて母性がくすぐられる。ここまで来て駄目だよとは言えない。断ったら多分流れるし、しょんぼりした2人を見るのは、私も悲しかった。
「いいよ。お布団出さなきゃね」
「やったー!」
2人はハイタッチをして喜んでくれた。私も明日まで休暇を貰っているので、多分大丈夫だろう。何かあったら早めに夏油くんか、代わりの人に迎えに来て貰えばいい。
布団を準備するについでに、朝ご飯の確認をする。お米もパンも中途半端にしかなかった。こんなことなら少し多めに食材買っておけば良かったな、とちょっと後悔する。
「2人とも、ちょっとお留守番頼んでいい?」
「どこか行くの?」
「うん。明日の朝ごはん足りなくて。今から買ってこようと思ってるんだけど、2人はパン派?ご飯派?」
「いつもはご飯だからパンがいい!」
「奈々子がパンなら私も。夏油さまはご飯だと思う」
「じゃあパン買ってくるね」
一緒に行くと言われたけれど、ご飯を食べてる途中だし夏油くんと入れ違いになったら困る。何かあったら電話するようにと番号を渡せば、渋々了承してくれた。どれだけ信用無くしたんだ、私は。
「帰ってくる?」
「帰ってくるよ、大丈夫」
玄関まで見送りに来てくれた2人に手を振って、扉を閉めた。ペットを飼ってる人の気持ちがちょっとだけ分かるような気がする。少しでも早く戻れるようにと、早足で一番近いスーパーへ向かった。
「あ、お豆腐安くなってる」
丁度帰省と割引の時間が重なったのか、いつもより混雑していた。必要なものをかごにいれていく。
着替えは持ってくるとして、歯ブラシはどうなんだろう。
「バケットとバターと…一応こども用歯ブラシも買って…夏油くんは多分泊まらないと思うし必要なものはこれくらいかな」
「私も泊まるよ」
「ひっ…!」
「やあ、なまえ。久しぶりだね」
ぽん、と肩を叩かれて手に持っていた商品を落としてしまった。床に落下する前にその原因となった夏油くんがキャッチしてくれて、ドキドキしながらお礼を言う。いつの間に背後に立っていたのか。この人だかりの中でよく見つけたものだ。
「ひ、さしぶりだね?吃驚した…」
「驚かせて悪かった。真剣に小物を選んでいたから声をかけづらくてね」
「ううん、てっきり呪霊タクシーで家に行くと思ってたから」
「流石にこの時間に呪霊で行動しないよ。それになまえのことだから買い物に出てると思ってね。となると荷物持ちは必要だろう?」
「何か行動読まれてて悔しいなあ」
「なまえは解りやすいから」
夏油くんはちゃっかり自分用の歯ブラシをかごに入れていた。