諸伏高明 様
この手紙を読んでいるということは、なんて、ありきたりな書き始めになってしまうことをお許しください。
手紙の正式な書き方がこれで良いのか少し不安ですが、細かな部分は目を瞑ってもらえたらとても嬉しいです。
改めて言葉にしようとすると、中々上手に出来ないものですね。高明さんの傍に居られて嬉しい、ずっと大好きです、そんな言葉しか頭に思い浮かんで来ません。もっとたくさん、感じていることはあるのに。困ったものですよね。
高明さんと初めてお会いしたのは数年前になるのに、その時のことをまるで昨日のように思い出せます。
ずいぶんと雨が降っている中、わざわざ車から降りて声を掛けてくれましたね。その印象がずっと残っていて、なんとなく高明さんには雨のイメージがついてしまいました。恵みの雨とも言いますから、あながち間違いでは無いかもしれないな、と感じています。
もう一度警察を信じてみようと思えたのは高明さんと、上原さんのおかげです。そして誰かに助けを求めようと思えるようになったのは、他ならないあなたのおかげです。
もっと早くに、あなたと出会えたのなら良かった。思わずそんなことを言ってしまった記憶があります。でも今になって思い返すと、あの時期に出会えたということもまた必然だったのかな、とも思います。
あの時は、前ばかりを見つめて進めている気になっていたんです。本当は過去の出来事と真正面から向き合わず、後回しにしていただけなのに。そうやって前に進めずにいた私に、高明さんは気付いてくれた。それがどれほど心強くて、どれほど涙が出そうになるくらい嬉しかったのか。きっとあなたは知らないでしょう。
まだまだ書きたい事も、知ってほしい事もたくさんあるのですがこの辺りで終わりにしようと思います。
高明さんと過ごした日々は、本当に、何にも代え難い物でした。本当にありがとう。
それでは、お身体に気をつけて。時折ちゃんとご自身を労わって過ごしてくださいね。
追伸
もしも、この人生の先にまた別の生が待ち受けているとして、
その時はどこか導かれるように、あなたとまた出会いたい。
製本にした内の終。
作中に出した本に挟んであった手紙の内容がこれです。手紙を書きなれていない、長い文章を書きなれていない人が書いた感が出てたらいいな…と思いつつ、中身を考えました。