諸伏紗弥 様


 陽春の候、春やわらぎ景明らかと言えれば良いのでしょうが、日々春寒料峭、花冷えの中に身を置いています。
 君が手紙に残してくれていたように、改めて言葉にしようとすれど中々纏まらないものですね。次から次へと言葉が溢れて取るに足らない事まで書き連ねてしまいそうになります。
 共に過ごした日々も当然ながら、今この時、君が先に旅立ってからの日々も、その存在を心強く感じています。
 毎日を過ごす部屋も、何気なく通る道も、再訪する場所も、君と過ごした日々と共に生きているのだと感じるばかり。ふとした瞬間に思い出が蘇ってきます。季節の移り変わり一つとっても、得も言われぬ感情が込み上げてくるというもの。
 時折夢に見る君はただ優しく微笑むばかりで少々寂しさが募ります。もし可能であるなら、時にはその声を聞かせてもらえたならば嬉しく思います。
 私が過ごす日々の中で起きる出来事に、君ならば何と言うだろうか。何を思うだろうか。そう、話したいことが増えていくばかりの日々。こうして手紙にしたためるのも良いですが、出来るならば直接話を聞いてもらいたいという気持ちが強くあります。
 そうした話を数えきれないほど抱えて、君の元へと追いつく日に手土産として持参しますので、少しだけ待っていてもらえたならば幸いです。
 再び会えたその時、また語らえるならばそれ以上に幸福なことはありません。

 どうか、またお会いできるその日まで。君に預けた僕の心をそのままに待っていてください。そしてその時はもう一度、僕の名前を呼んでほしい。
 いつまでも、君の事を想っています。


諸伏高明



■2025/4/13/
製本にした内の終。
作中に出した本に挟んであった手紙への返事。文章に慣れ親しんだ高明さん、書きなれていない夢主との差が上手く表現できていたら良いな、と。
個人的にこの高明さんからのお返事は最初の一文が気に入ってます。


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