大丈夫と言ったから




ダイゴさんは絶対にエスパータイプだ。誰かに言おうものならいやいや鋼タイプだよなんて言葉が聞こえてきそうだけれどそこはウソッキーの法則を引っ張り出してみせる。鋼タイプにみせかけたエスパータイプ。私の答えは揺るがない。

「何かあったでしょ」

ふわりと甘いハチミツの香りが私を中心としたソファー周辺の空気を変える。驚き目を丸くする私にコップを差し出しながらダイゴさんは小さく笑ってみせた。石への情熱を覗いたあらゆる面で気品を漂われせるダイゴさんはきっとおしゃれな紅茶や香り引き立つコーヒーなんてお手の物だろう。実際にダイゴさんの淹れてくれる紅茶やコーヒーはとてもおいしい。けれど今こうして私の手の中にあるハチミツミルクは特別。

「どうして?」

「なんとなくかな。そんな気がしたんだけど、当たり?」

「確信あるよね」

「まあね」

溜め息は何度も飲み込んだし疲れた素振りを見せた覚えもない。なんとなく。それだけでダイゴさんは私のすべてを見抜いてしまう。嬉しいような、ばれないように振舞っているだけあってほんの少し悔しいような。

「ねえダイゴさん」

「うん?」

「何も話さなくてもいい?今はただ隣にいてほしい」

「どうぞ。それが名前にとって一番いい形になるなら僕はそうしたいと思うよ」

「ありがとう」

ダイゴさんの肩に頭を傾けてハチミツミルクの香りを体の全部に届ける。柔らかな甘さは心が一番に安らいだ。それでもこれは不思議なことにダイゴさんでなければ作り出すことができないのだ。いくら自分でミルクにハチミツを溶かしてもそれはただの誰にでも作ることができるもの。だからこそダイゴさんのそれは特別。私が悩んだり落ち込んだりしたときだけにひょっこりと現れる。

「眠たくなってきちゃった」

「こぼしても拭いてあげないよ。寝るなら全部飲んでから」

「はーい」

安らぎはいつしか眠りへ。ポカポカと温まった体をそのままダイゴさんに預けてしまおう。きっと小さな溜め息と共に受け止めてくれるから。ダイゴさんは私の望む通りの行動をしてしまう。

「名前」

「……」

「もう寝ちゃったの?ずいぶんと早いんだね。明日はきっといい日になるよ。僕がそうしてあげるから大丈夫だよ」

絶対に大丈夫。おでこに触れた唇に約束を。素直じゃない私はそのまま瞳を開けられない。