06






「天使ってどういうこと?」
「こんな世界だもの、おかしくはないわ」
「どうして私たちはあなたのことを忘れているの?」
「私が罪を犯したから。その罰よ」
「罪って何?」
「人間に恋をすること。罰としてみんなの記憶から私は消え、みんなは私のことを忘れてしまった。そして私もまた、みんなのことを忘れてしまっていた。ここに戻ってくるまでは」
「どうしてここに戻ってきたら記憶が戻ったの?しかもあなたとルーシーだけ!」
「私にはまだやることがあるから。ルーシーは純粋な心を持っているからよ」
「助けたってあなたたちは私たちに何をしたの?」
「アスランは長い間ナルニアを離れていた。そんなアスランを、あなたたちがナルニアに来るのに合わせて呼んだのよ」

スーザンはひどく混乱しているようで、たくさんの質問を一気にアンジーに投げつけた。アンジーはそれに淡々と答える。

「意味がわからないわ」
「仕方が無いけれど、これが事実よ」

スーザンは近くの岩の上にストンと力なく座った。ピーターもまだ納得出来ていないようだった。

「アンジー…」
「騙してたわけじゃないの。私もピーターも本当に何もかも忘れてしまっていただけなの」
「どうして僕は思い出せないんだ!ルーシーは思い出せるのに!今はナルニアのことも、アスランのことも信じてる!」
「ピーター…」

アンジーは深く溜め息をついて、

「恋愛って、真っ黒で醜いのよ」

と言った。アンジーにはそれ以上ピーターにかける言葉が見つからず、静かにその場を立ち去った。ピーターはアンジーのあとを追うことはしなかった。代わりに、カスピアンがアンジーのあとを追いかけた。何かあっては危険だから、と。

「ピーター…」
「どうしても、思い出せないんだよ…」

ルーシーは今にも泣き出してしまいそうなピーターを優しく抱きしめた。エドマンドも、そういうこともあるよと彼なりの励ましの言葉をかけた。
アンジーは外にいた。

「危ないから、中に入って。えっと…」
「アンジーでいいわ、カスピアン王子」

カスピアンが中に入るよう促すが、アンジーは頑なにそこを動こうとはしなかった。

「私も、ピーターのことを忘れていたの。大事なことをずっと長い間忘れてた」
「それが罰だったんだろう?なら仕方が無いさ」
「そうかしら…」

アンジーはずっと遠くを赤い目をして見つめていた。カスピアンはそんなアンジーのことを黙って見ていた。
神様、あなたはなんて残酷なんだ。