詳しく話を聞くと、どうやらカスピアンが段取りを無視して自分勝手なことをしたらしい。仲間の半分以上が城に取り残され、きっともう生きてはいないだろう。
「そんなことがあったの…」
「ねぇアンジー、みんなを助けられないの?」
ルーシーが悲しい目をしてアンジーを見る。つられて、みんなの視線がアンジーに集まる。
「何か勘違いしてない…?私はただの天の使いよ。神の心を人間に、人間の願いを神に伝えるのが私の役目。悪いけど、私に助ける力はないわ…」
「だったら神様に…アスランに伝えてよ!助けてって!」
アンジーはただ一言「ごめんなさい」とだけ言った。それにルーシーは耐えきれず、泣きながら塚山の中に走っていった。ピーターとスーザンもルーシーの後を追って塚山の中へ入っていった。アンジーを見つめる谷あらしとトランプキン。
「誰にだってできることできないこと、それぞれあるでしょう?」
そう言うとアンジーは森の方へ向かって歩き出した。
次にアンジーが塚山に帰ってきた時、塚山はテルマール軍に囲まれていて、塚山の中はしんとしていた。
「アンジー!今までどこに行ってたんだ」
ピーターがアンジーに駆け寄る。
「ちょっと森へ。ところで今はどういう状況なの?外にはテルマール軍がいるし…」
「そのことで作戦を立ててたんだ。それでルーシーが森へアスランを探しに行くことになったんだけど…」
「アスランが森に?」
「私見たの」
ピーターたちが森でカスピアンたちと合流する前に、ルーシーは森の中でアスランを見たという。その時ルーシー以外は目撃しておらず、野生のライオンと見間違えたのではないかという話で落ち着いたらしいが、いよいよこうなるとアスランの力が必要ということでルーシーが森へ探しに行くことになった。
「その間時間を稼ぐために僕がミラースと一騎打ちをする。エドマンドはミラースに果し合いを申し込んできてほしい」
「わかった」
「待って。私も行く」
ピーターはそれに猛反対したが、アンジーも引かなかった。
「奴らは信用出来ない!何があるかわからないんだ!」
「だからよ!だから、私も行くのよ」
そしてアンジーはエドマンドと一緒にテルマール軍の元へ向かった。
「“我、ピーター。
アスランの贈位と選出と征服によるナルニアの一の王にして、ケア・パラベルの城主、離れ島諸島の帝王は、これ以上の流血の惨事を防ぐため、ここに一騎打ちによる果たし合いをミラースに申し込む。
どちらかが死ぬまで戦い、勝った者がこの地を支配する”」
「エドマンド王子」
「王だよ」
「なんだって?」
「僕は王子じゃなくて王様。ただの王だけどね、ピーターが一の王。わかるよ、ややこしいでしょ」
ミラースは納得のいかないという顔だった。
「それから、そこの後ろの女」
ミラースは後ろに立っていたアンジーを指差した。