「今度私が追い込まれた時は弓でやつを撃て」
戻ってきたミラースは甲を地面に叩きつけた。
「卑怯者…!」
アンジーはミラースを睨んで言うが、アンジーが取り押さえられているのをいいことにミラースは笑いながら言った。
「こういう戦い方もあるというわけだ」
「正々堂々戦うって言ったじゃない!」
「知らんな」
アンジーは悔しさで力いっぱい下唇を噛んだ。
ピーターは左肩を脱臼しており、苦痛の表情を浮かべていた。
「スーザン、お前は上に行ってろ。ここは危ないからな」
スーザンは一度ミラースの方を見て、それからもう一度ピーターを見てそっと抱きしめた。
「っ、」
「ごめん」
「いいんだ」
「気をつけて」
不安そうにピーターを見つめる仲間を見てエドマンドはピーターに「笑って」と言った。ピーターは仲間の方を見て笑って見せたが、その顔は引きつっていた。
「僕、どうなるんだろうな、ここで死んだら」
脱臼を治すエドマンドにピーターは静かに言った。
「お前には助けられてばかりだ。一度も、っ!」
「お礼はあと」
エドマンドは思い切りピーターの肩を押して脱臼を治した。ピーターはカスピアンに支えられて立ち上がる。エドマンドから剣を受け取り、再び一騎打ちが始まる。
いつの間にか素手の戦いになっていた。ピーターがミラースの太ももの傷を殴ると、ミラースは膝から崩れ落ち、ピーターに「待て」と言った。それにピーターは動きを止める。「情をかける必要なんてないよ!」とエドマンド。
しかしピーターは振り上げていた拳を下ろし、ミラースに背を向けた。瞬間、
「ピーター危ない!」
ミラースが剣を拾い、その剣をピーターめがけて振り下ろした。
アンジーの声にピーターは振り向き、間一髪のところで剣を避けた。そしてその剣を奪い、ミラースの脇腹に突き刺した。剣を引き抜くと再びミラースは膝から崩れ落ちた。
「どうした小僧。命を奪う度胸もないか」
「僕の役目じゃない」
ピーターはカスピアンに剣を差し出す。カスピアンは少し戸惑いながらも剣を受け取り、大きく振り上げミラースの前に突き刺した。
「お前のようにはならない。生かしてやる。だがナルニア国は、彼らに返す」
そう言うと、わっと歓声が上がった。