「そうだ…アンジー…!」
ピーターは急いで塚山へ引き戻した。塚山まで戻ると、そこにアンジーの姿はなかった。あるのは血の跡だけ。
「アンジー!!」
ピーターは周辺や瓦礫の下を探したが、ついにアンジーは見つからなかった。
その日のうちに城では宴が行われたが、ピーターは部屋から一歩も出なかった。次の日になるとピーターとスーザンはアスランに呼ばれ、2人はもうナルニアには来ることが出来ないことを告げられた。
「君たちはナルニアでたくさんのことを学んだ。次は自分たちの世界で生きて、しっかり学びなさい」
「なぁアスラン」
アンジーのことを知らないか。ピーターがアスランにそう聞こうとした時、ちょうどカスピアンがやってきて、「お願いします。みんな集まりました」と言った。
「ナルニア国はナルニア人たちのものだ。平和に暮らしたいテルマール人はここに留まっても構わない。しかし望む者にはアスランが祖先の地へと案内してくれる」
「テルマールを離れたのは何世代も前のことです」
「テルマールへ戻るのではない。お前達の祖先は海の盗賊、ある島を拠点とした海賊だった。そこで見つけた洞穴を通ってこの世界に来たのだ。王や女王と同じ世界から。その島に戻らせてやれる。新たにやり直すには打って付けの場所だ」
「私は行きます」
群衆の中から、ミラースの部下が名乗りを上げた。
「案内してください」
「私達も」
その次にミラースの妻が。
「真っ先に申し出た者達には良い未来が待っているだろう」
アスランが息を吐くと、後ろのねじれている木が動き、輪ができた。
ミラースの部下や妻がそこをくぐると、一瞬で消えてしまった。するとそれに罠だという声が上がった。
「陛下。わたくしでお役に立てますなら、一族11名を連れてくぐりましょう」
「僕らが行く」
ピーターが一歩前に出た。ピーターは泣いたのか、目が赤く腫れていた。
「行くの?」
「そうだよ、時間だ。それにもう、僕らは必要ない」
ピーターは腰に差していた剣をカスピアンに渡した。
「戻るまで預かっておこう」
「これっきりよ」とスーザン。
「もう戻らないわ」
「戻らないの?」
「2人は戻れる。アスランはそのつもりだと思う」
「ピーターたち、何か悪いことした?」
ルーシーは戸惑い、アスランの方を見る。
「何事にも潮時というものがある。お兄さんとお姉さんはこの世界で十分学んだ。今度は自分の世界を生きるべきだ」
ルーシーは悲しそうに俯いた。
「大丈夫だよ。予想してなかったけど、いいんだ。いつかわかるよ」
「でも…じゃあ、アンジーのことはどうするの?」
ルーシーの言葉にピーターは固まった。