それからアンジーはナルニアに来てからの生活の話をした。アンジーがナルニアに来たのはもう2000年も前の話で、来た当初はしばらくアスランと過ごし、その後はフォーンと一緒に暮らしていたらしい。
この時アンジーは両親を殺した罰として不死の呪いをかけられていて、何をしても死ねず、何度も何度も仲間が死んでいく姿を傍で見ていたという。
「本来ナルニアへは純粋な心を持った子供しか来れないといつかに聞いた気がしたのだけれど、だったら私はなぜナルニアへ来れたのかしらね」
ピーターはぼろぼろと涙をこぼしていた。
「もう。なんでピーターが泣くのよ。変な人ね」
アンジーは泣きじゃくるピーターを優しく抱きしめた。
「ねぇピーター。キスをして?」
アンジーが言うと、ピーターは優しく、甘いキスをした。
「私、2000歳よ」
アンジーはわざとらしく言う。
「関係ない。僕は君のことを愛してるんだ」
「私もピーターのことを愛しているわ」
2人は何度も、何度も何度も唇を重ねた。
「そろそろ戻りましょうか」
2人は手を繋いで外へ出た。
広場へ戻ると、「話は済んだか?」とアスラン。
「ええ、時間をありがとう」
「帰りましょう、ピーター」
5人は木の前に並んだ。
それと同時にアンジーはピーターの手を握る自分の手の力を緩めた。
「アンジー?」
「私は帰れないわ。言ったでしょう、私はずっと前に死んでるの。帰るところがないのよ」
「じゃあ僕も残る!」
「ピーター、それは許されない」
アスランが低く重たい声で冷たく言った。
「どうにかならないのか!?」
「アンジーの言った通りだ。アンジーに帰る場所はない」
「そんな…」
ピーターは膝から崩れ落ちてしまった。スーザンとルーシーが優しくピーターを抱きしめる。
「スーザン、ルーシー。ピーターをよろしくね」
「えぇ…」
「頼む、僕を1人にしないでくれ。僕には君が必要なんだ!」
「ピーターは1人じゃないわ。エドマンドも、スーザンも、ルーシーもいるじゃない」
「でも向こうには君がいない!」
「ピーター!もう、帰りましょう」
スーザンに引っ張られ、ピーターは力なく立ち上がった。そしてピーターたちは木の幹をくぐっていった。ピーターは振り返りはしなかった。
あぁ、やっと許されるのね。
アンジーは涙を流しながらゆっくりと目を瞑った。