ピーターもまた、いつもより早く起きて学校へ向かっていた。わざと女子校の方まで散歩と称して歩いていっては、きょろきょろと辺りを見回してアンジーを探していた。
程なくして、幸運なことにアンジーの後ろ姿を見つけることが出来た。しかし声をかける勇気などはピーターにはなかった。しばらくどうしようかとアンジーの背中を眺めながら考えていると、アンジーがよろけるのが見えた。
危ない。そう思った時には足が動いていた。
「大丈夫!?」
ピーターの腕の中のアンジーは顔を真っ青にしてぐったりとしている。
「貧血?」
ピーターが声をかけると、アンジーは力なく答えた。
「昨日ご飯食べなかったから…初めての会話がこれなんてちょっと残念」
アンジーの言葉にピーターの鼓動が速くなる。それはどういう意味?と聞いてしまいたかったが、医務室に行くのが先だった。
「ごめん、ちょっと触るね」
そう言ってピーターはアンジーのことをそっと優しく抱きかかえた。すると「待って」と小さな声で止められる。
「やだ、気づかなかった、最悪…」
アンジーが何のことを言っているのか、ピーターはしばらく気づかなかった。しかし、つんと少しだけ鼻をつく鉄の匂いとスカートの中を気にするアンジーを見てようやくわかった。
「えっ、と、どうしよう、妹呼んでこようか!?」
ピーターは慣れない事態に戸惑う。
「でもここで君を1人にするわけにも行かないし…」
慌てるピーターを見てアンジーはクスリと笑った。
「ごめんなさい、ちょっと面白くて。私はもう大丈夫よ、ありがとう」
気怠い体をなんとか起こして立ち上がろうとするアンジー。それをピーターは慌てて止めた。
「無理しないで。嫌じゃなければ僕が医務室まで連れていくから」
アンジーは少し考えて、小さな声でお願いと言ってピーターの服の袖を掴んだ。アンジーの仕草でピーターの鼓動は速くなるばかり。
もう一度アンジーを抱きかかえて、ピーターはアンジーに負担がかからないようにとゆっくり歩いた。
気になっていたあの子が今自分の腕の中にいる。ピーターは密かに今の状況を噛み締めていた。アンジーも、心臓の音がピーターに伝わってしまうのではないかと抑えるのに必死だった。それと同時に、もっと素敵な出会い方をしたかったと少し後悔していた。