医務室には誰も居なかった。
抱えていたアンジーを下ろし椅子に座らせる。
「困ったな…先生を呼んでこようか?」
「大丈夫よ、ありがとう。…あの、重かったでしょう?」
「いやむしろ軽いと思った。昨日は食べてないって言ってたけど、普段ちゃんとご飯食べてる?」
ピーターはアンジーの顔を覗き込んだ。すると一気にアンジーの顔が赤くなる。意識せずに顔を近づけていたピーターもアンジーの顔が赤くなっていることに気づきつられて顔を真っ赤にする。
「ご、ごめん」
しばらくの間沈黙が続く。
その沈黙を先に破ったのはピーターだった。
「あ、そうだ。僕部屋出た方がいいよね。その…下…」
ピーターはアンジーから少し目を逸らして言う。それにアンジーは慌てて座っていた椅子が汚れていないか立ち上がって確認する。急に立ち上がったせいでピーターのいる方向に倒れそうになってしまった。アンジーはまたピーターに抱かれる形になった。
「あの、本当にごめんなさい…」
「気にしないで。それよりやっぱり、先生を呼んできた方がいいよね」
「そうね…お願いしようかしら」
ピーターの腕につかまりながらゆっくり立ち上がろうとした時にアンジーはあることに気づく。
「どうしよう、袖に血が!ごめんなさい…!」
ピーターが確認すると、たしかに右腕の袖のところに赤黒くシミができていた。ピーターは気にしないでと言ったが、アンジーもアンジーでさすがにそのままそうですかと引き下がることも出来ない。どうしようかとアンジーが考えていると、
「じゃあ今度僕とデートして」
とピーター。
アンジーは驚いて、ピーターの顔を見るとピーターもしまったという顔をしていた。つい口を滑らせてしまったという顔だった。無かったことにしようとピーターが口を開こうとすると、アンジーに先を越されてしまった。
「わかりました、私とデートしましょう!」
「え、ちょっと待って!冗談だよ!」
ピーターは必死に冗談だと言うがアンジーは聞かない。
「それで許してもらえるのなら!」
「許すも何も気にしてもないんだし」
「でもそれじゃ私の気が収まらないんです!」
まさかこんな形でデートの約束を取り付けることになるとは。ピーターはやってしまったと思うと同時に心は幸せな気持ちで満たされていた。
2人とも同じことを考えていた。
気になるあの人ときっかけはなんであれ、ここまで近づけるとは。