「実は私、数年前に引っ越してきたんだけれど、病気がちだからあまり外を歩いたことがないの。だから、もしよかったらピーターのおすすめの場所に行きたいわ」
アンジーの口からピーターの名前がこぼれる。ピーターはそれだけだ心が踊るような気分になった。
「おすすめの場所か…ナルニアに、連れていけたらいいのに…」
「ナルニア?それはどこ?」
ピーターはうっかりナルニアのことを口にしてしまった。あの夢のような、美しい世界のことを。
「いや、なんでもない。どこがいいかな」
アンジーはナルニアに興味を持ち始めていたが、ピーターは慌ててアンジーの気を逸らそうと近くのカフェの話をした。
「そこのケーキはとっても美味しいんだ」
「そうなの?私甘いもの大好き」
上手くかわせたようで、アンジーの意識はケーキに逸れていた。
「それにそこは紅茶も美味しい」
「いいわ、そこに行きたい」
アンジーは満面の笑みを浮かべて話す。アンジーの笑顔はキラキラと太陽のように眩しかった。ピーターも喜ぶアンジーを見て笑顔になった。
「じゃあそうだな…今度の日曜日はどうかな?」
「大丈夫よ。お洒落していくね」
アンジーはきっと何も考えていなかったのだろうが、ピーターにはその一言が突き刺さった。あまり可愛いことを言わないでくれ。そう口からこぼれそうになって、必死に抑える。
「いけない、そろそろ夕飯の時間だわ。遅れるとうるさいの。じゃあまた明日ね!」
また明日。ピーターは跳ねて喜びたいくらいだったが、気持ちを抑えて静かにまた明日とアンジーに手を振った。
その日の夜、ピーターはエドマンドにずっとにやにやしていて気持ちが悪いと言われた。そのにやにや顔のまま、ピーターは日曜日を迎えることになった。
日曜日、ピーターは約束の時間30分前に待ち合わせ場所に着き、暇を持て余していた。程なくしてアンジーが待ち合わせ場所にやってくる。
「あれ、もしかして私待ち合わせ時間間違えちゃった!?」
どうしようなんて言いながらこちらに向かってくるアンジーは花柄の淡い色のワンピースを着ていて、いつもはストレートの白い髪の毛を毛先の方だけくるんと巻いていた。どうしようもなく可愛い。通行人も思わずアンジーに見とれて立ち止まる。
「こんにちはピーター。今日はよろしくね。友人に服を選んでもらったのだけれど、どうかしら?」
アンジーはワンピースを少しつまんでピーターの前でくるりと一回転してみせる。それがまたたまらなく可愛らしくて、ピーターは言葉を失ってしまった。それを見たアンジーが
「おかしかったかしら」
とおずおずと上目遣いで聞いてくるもんだから、ピーターはたまらず顔を真っ赤にして「可愛すぎるよアンジー」と言った。