「おいそこの小僧2人。ここは仲良く兄弟で来るような場所じゃあねェぞ。」


 後ろからダミ声のオヤジが来て、私たちの話の腰を折った。



 多分、私は邪魔されたのが気に食わなかったんだと思う。
だってゴンと話すのは楽しかったから。


「私たち兄弟じゃないし、第一私小僧じゃないです。」


 わざとつっけんどんに答えた。

 ほぉ、とこちらに向いたのは好奇の目。
酒臭い息。手にはウイスキーの小瓶。
サンタクロースのような髭面に赤い鼻が特徴的な、見るからに船長ですという風貌の、すごく嫌な感じの男。



「乗る船間違えたんじゃねーか?」
「ちょっとどういう意味ッ!?」
「お、落ち着いて#アクア#、」
「や、だっ!私こういう狭い世界の中で偉そうにふんぞり返ってる奴が一番ムカツク!何にも知らないクセに!」
「けどオレ達この人の船で運んでもらってるんだから」
「だって降りろって言ったッ!」
「も〜、降りろとは言ってないじゃん!」
「揚げ足取らないでよ!」
「揚げ足じゃないよ!こんなことでムキになる#アクア#がおかしい!」
「ゴンは女じゃないからそんなこと言えるんでしょ!」
「別に#アクア#がほんとに弱いわけじゃないんだからいいじゃん!」
「もぉ!全然わかってない!さっき次の嵐の時は一緒に外にいてもいいって言ったけど、あれナシね!」
「あ、汚ねー!それとこれとは関係ないじゃん!」

「…ちょっと待て。」

「「何!?」」

「そっちの小娘。おまえ今までずっと外にいたのか?」
「そーですけど。」
「そういう自分勝手な振る舞いされちゃあ困るんだがな。」
「だったらあの乗客達のガラの悪さを何とかして下さい。」
「放っといても全員降りるだろう、ありゃ。おまえ今までどこにいた?」
「見張りマスト。」
「どうやって?」
「だから、縄で体を…」
「あんなところに居たら、波しぶきと雨で息もできないはずだ。」
「…別に平気。それくらいできないでハンター試験なんて、恥ずかしくて受けらんないでしょう?」
「…。ふん、まあいい。じゃあ次の嵐ってーのは?見ろ、空はこんなに晴れてるじゃねェか。」
「それは私じゃなくて、そっちの子がそうだって言うから。」


 顎でゴンを示すと、なんだよまだ怒ってるわけ?と言いたげな不満そうな目をしていた。
が、船長の興味の対象がゴンに移っていたので口喧嘩には発展しなかった。

 今度は船長の視線に気づいてキョトンとしている。

 絵に描いたようなキョトン顔。
うーん、やっぱり面白い子だ。


「…え、オレ?」
「そうだよ。」
「だって、来るよね?」
「なぜそう思う?」
「風が生ぬるくて塩気が多いし、ウミヅルも注意しあっているから。」


 鳥がなんて言ってるかわかるのか。さすが野生児、と感心していたら、船長が同じようなことをでっかく声に出して言った。

 どうやら船長、ゴンが気に入ったらしく船の操縦をやらせてあげるという。

ちぇ、あたしは蚊帳の外ですか、と思いかけたところで船長から当たり前のように「オラ何やってんだ、早く来い」と言われたのがちょっと嬉しくて、同時に自分の卑屈さが恥ずかしくなった。



「…ゴン、さっきはごめんね。」
「え、何が?」
「……。」



 …うーん。侮れんヤツ。

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