不可視の幸福 4

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 軽く繋がった場所を押し付けて、先端で奥を何度も突き上げた。時間を掛けて慣らして開いた後腔は、擦れると粘ついた音が立つほど濡れて解けている。痛みはないのだろう。
 ただ、時折押し出されるような呻き声を上げるのが心配で、大丈夫かと二度三度尋ねたが、頷く反応が返ってくるだけだった。前髪が額に貼り付いて、普段の堅苦しい雰囲気は片鱗も残っていない。
 朦朧としている中でも、時折思い出したように羞恥に苛まれる表情が、却って欲情を煽るからたちが悪い。
 目が見えなくなるのが不満で、汗で貼り付いて目元を隠す前髪を掻き上げてやると、息を吐いたユージオが目元を拭いながら呟く。

「……何か……あつい」
「やっぱ発熱してたんじゃねえか……?」
「してない……じゃなくて」

 は、と熱っぽい息が洩れるのは、緩く奥を突いたせいだろうか。
 それ以上何か言おうとしないのは、考えがまとまらないからかも知れない。考える前に漏れたような呟きだったから、意味を質しても仕方がないのだろう。
 そう思いながら繋がった場所を身体ごと繰り返し揺さぶってやると、行き場を探すような手が、肩口に置かれていたクランカイトの腕に縋ってくる。

「ん……ッ、く……」

 何だか少し、熱に浮かされたようなその表情が、快楽に蕩けて見えた気がした。
 軽く手を握って寝具に押し付け、腫れたままの胸をまさぐった。途端に絡んだ指に爪を立てて、何かを堪えるように眉尻を下げる。

「ッあ、ン……ぅ」

 鼻にかかった掠れた声も、何だかひどく甘ったるく響く。逃れるように動く腰を押さえるように上から体重を掛けて、首筋を唇で食んだ。きゅう、と繋がった場所が竦むのは、彼が快楽を拾っているからだろう。

「……もしかしてここ、そんなに苦しくねえの?」
「ッあ……!」

 とん、と奥を抉ってやると、ユージオの口から上擦った声が上がった。
 意外に思いながら身体を起こすと、ユージオ自身思い掛けなかったという顔をして自分の口元を手で塞いでいる。

 ――苦しくない、どころではないらしい。

「いいんだ」
「……何か……神経毒……」
「どういうことだよ」
「……じくじく、して……あつ、い……」

 先ほども呟いていたことだ。熱があるということではなくて、繋がった場所がそういう風に感じるということなのだろう。
 それはよかった、と独り言のように呟いて、クランカイトは大きく奥を突き上げた。揺するように浅く出し入れしていた動きとは違う。性器のくびれまで引き抜いて、一息に貫く。

「ンう……!」

 喉から上がる嬌声に苦痛ではないことを確かめながら、何度も深く引いて、押し込む。ぱつ、と肌がぶつかる音がするほど大きく動かしてやっても、苦しげな反応は見せなかった。むしろ、快楽を拾っているような表情にほっとして、同時に自制心も緩んだ。
 理性を壊すような甘い感覚から逃れるように、どうしても細い身体は無意識に逃げを打つ。それを押さえ付けて引き摺って、手足を掴んで何度も身体の中を無遠慮に行き来する。

「ふ、ああ、ぁ……ッ」

 漏れ出す声を堪えられなくなるほど感じているのがよく分かる。柔い粘膜が蠢いて絡み付く感覚がたまらない。
 必死の最中、揉み合う内に体勢が変わる。
 捩れる身体を留めるように片脚を持ち上げた。横から押し込むような姿勢に変わると、ユージオが自分の下肢に手を伸ばしながら腰を反らせた。

「ぃ、そこ、あ……!」
「……これあれか、いいとこ当たる?」
「ッんん――……!」

 肯定なのか否定なのか分からない声は、もうクランカイトの言葉も聞いていないのだろう。
 突き上げるとちょうど浅い所に引っ掛かる。ずっと撫でるだけで強く刺激しなかった場所ごと強く擦り立てながら、奥まで一気に押し込む。下肢に伸びたユージオの手が繋がった場所に触れるのは、無意識の抵抗のためなのだろうが。
 その手を取って、わざと繋がった場所を指で辿らせると、真っ赤になったユージオが少しだけ正気に戻った目をして、掴んだ腕を払った。
 小さく笑いながら掴んだ脚ごと身体を揺すってやると、すぐに取り戻した正気は快楽に蕩けてしまうのが分かる。

「……気持ちいい?」

 ただの話題ですら性的なことを忌避する彼が、普段なら絶対に『よくない』と答えるはずの問い掛けだ。いつもはそんな答えが返ってくるのが分かっているから可笑しくて、軽口のように尋ねているはずの質問。
 けれど今日は、舐られて蕩けた飴玉のような瞳がクランカイトを捉えて、羞恥に眇められた。
 迷うように唇が動いて、一度噤まれて。もう一度恐る恐るというように遠慮がちに開かれた唇が、ほとんど吐息だけの音で答える。

「……っい、い……」

 きっとそのせいで気が逸れてしまったのだろう。
 思いがけず粘膜の中の凝りに先端を引っ掛けて思いっきり抉ってしまい、クランカイトは慌てたように繋がった下肢の方へと視線を落とした。

「あ、ごめ……」
「ひ、ッああ――……!!」

 繋がった場所だけでなく、全身がびくびくと激しく痙攣する。クランカイトの欲情を噛み締めた粘膜がきつく収縮し、粘液が縁からわずかに押し出されて溢れる。薄い腹が波打って、クランカイトの腿の辺りに白濁が散っていた。
 確かめるようにユージオの性器を撫でると、くたりと芯をなくして体液に濡れている。いつもは触ってやらなければ達せないはずなのに、こうもあっけなく欲を吐き出してしまうのだから、本当に快楽を得られていたのだろう。
 まだ熱が散らないままの身体は、軽く撫でるだけでひどく感じ入ったように跳ねる。

「っ、あ……!」
「ちょっと姿勢変えような」

 少し動いただけでもきつく締まる後腔からゆっくりと抜け出て、ユージオの身体をうつ伏せにする。上から押さえつけて、閉じた脚の間にまだ硬いままの屹立を宛がうと、ひ、とユージオの喉が鳴った。

 ――いやな予感でも抱いたのだろう。その感覚は正しい。

「……好きにされたいって言ったもんな?」

 耳元に顔を寄せて尋ねると、赤い果肉のような粘膜を再び抉じ開けていく。両脚を閉じているせいで摩擦が増した感触に、目が眩みそうになりながら。

「逃げようとしてもいいぞ」
「ばか、や――……あ、ぁん」

 逃がす気などさらさらない軽口を叩いて、クランカイトは下生えが擦れるほど深くまでぴたりと納めた。
 うつ伏せにして上から肩を押さえ付け、両足を外側から挟んで抵抗を奪う。抉るようにして奥を突き上げると、逃げ場を失ってもがくように膝下からの足が跳ね上がる。俯いてくぐもった悲鳴が聞こえた。

「ひう、ぅ……!」

 啜り泣きに混ざって聞こえる嬌声が蕩けていた。達したばかりの身体は立て続けに痙攣を起こしている。
 自分でも知らず知らず冷淡な笑みを浮かべて腰を引き、音が立つほど強く押し込んだ。

「あ、あ゙――!!」

 喉から漏れる声を堪える余裕もなくなって、ひと際大きく上擦った声が漏れる。
 散々に煽られて気遣いの片鱗すらどこかに散ってしまった今、悲鳴じみた嬌声すらも恍惚だった。肌がぶつかる音を立てて何度も何度も貫いて、ぐちゃぐちゃに蹂躙する征服欲に理性が侵されている。

「……狂ってるな」

 そう自嘲気味に呟きながらも、止めようと思わない自分に心底呆れた。
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