報告をあげに戻った僕は状況を説明し、先生方に助けを求めた。
けどそれと時を同じくして、実継はその場に姿を現した。
僕と同じ色をしている筈の制服が何か赤黒いものに染め変えられているうえに、身体にはあちこち切り傷や擦り傷が見え隠れしている…怪我だらけじゃないか!

「実継っ…」
「ああ伊作君……先に報告、ありがとう…」

息が上がっているのに、実継は僕に微笑んだ。
どうしてこんな状況で笑えるの?
君は傷だらけで、満身創痍の状態なのに!

「早く手当てを!」
「そんなに心配しないで…傷は深くない、よ?」

「っ深さなんて関係ない!傷は傷だよ、放っておけない!」
僕の剣幕に驚いた実継はその後素直に手当てを受けてくれた。

確かに彼の言う通り傷はみんな浅かった。
でも実継は僕の心配ばかりして、自分の傷の多さにまったく頓着がない。
僕の傷なんて大したことはないし誰がどう見たって実継の方が重傷だ。
それなのに実継は僕に怪我はないかとしきりに訪ねてくる。

「大丈夫だよ、僕はほとんど怪我なんてしてないから…それよりっ」
「それなら良かった。きちんと手当を受けるんだよ?小さくとも悪化したら大変だ」

次第に苛ついてきて思わずキツめの消毒液をぶっかけてしまった。
それでも実継は眉を寄せたくらいで怒りもしない。

おかしいよ実継。
君はどうしてそんなに自分に頓着がないんだい?
傷ばかりじゃない、その命そのものにも執着がないような…そんな感覚すら覚える君の無関心。

それでいて他人に対しては酷く優しい。
実習を終えた組のみんなが声をかけても彼は笑顔で答えてみんなの心配をする。
怪我はしなかったか?任務はうまくいったのか?と。
そしてその実力は計り知れないものを持っている。
プロ忍相手に逃げ切ったかあるいは…倒したんだろうか。
そんな彼をどうして理解することができるだろうか?

まるでお伽話に出てくる人物のような、現実味のない人。


いつか何の前触れもなく消えてしまうんじゃないかと、僕はまた怖くなった。




その後、本当に実継は消えてしまった。


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