嫌よ嫌よも好きのうち

「私は臨也の事、大嫌い」

私の言葉に彼はクスリと笑いながら言う。

「残念だなあ、俺は君を愛してるのに。」

「臨也が愛してるのは私じゃなくて人間だもの。……いえ、人間だから愛してるの?」

私は淡々と言う。

「そうさ、俺は人間が大好きだ!!人、ラブ!!…けどね、君の事はもっとずっと愛してるんだよ?君は特別だからね。」

「特定の人間を愛さないのが折原臨也でしょ。」

私の言葉に彼は困ったように微笑む。

「そうなんだけどねえ…君が悪いんだよ、佳音。」

名前を、呼ばれた。

彼に名前を呼ばれると根っこが生えたみたいに身体が動かなくなる。

私の視界はもう、彼しか映さない。

それでも精一杯睨み付ける。

「臨也なんか…大ッ嫌い」

彼は私の言葉に笑みを浮かべる。

「俺のどこが嫌いなの。」

「悪趣味、歪んだ愛情、人をサラリと騙しちゃうとことか。」

「否定はしないよ」

「私は臨也の生き方に共感出来ない。そういう生き方は大嫌いなの。人を自在に操って情報操作して…あり得ない。」

「うんうん。」

「だ…だからっ…」

声が震えそうだ。

「貴方が……大ッ嫌いなの―折原臨也。」

彼はニヤニヤと笑いながら言葉を紡ぐ。

「じゃあ俺の事を大嫌いな佳音はちゃんと抵抗できるよね?」

「?」

どういう意味かと尋ねようとした途端、

「!?…んっ…むぅ」

唇を絡めとるようにして口を塞がれた。

甘い蕩けそうなキス。

―身体が痺れる。

酔いしれて溺れていく。

「なーんで抵抗しないのさ?」

目の前にはニヤニヤ笑う臨也。

私は彼から目をそらして呟く。

「……大ッ嫌い」



(こういう風に人を掻き乱すのも大嫌いなのに)(彼は最低の人間なのに)(大ッ嫌い……なのに)(どうして?)